きっと、何度でも【岩谷翔吾】 (ページ3)

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長く、深くページ3

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翔吾 side

──────── 翔吾、起きて

翔吾「ん、」

北人「しょーごー」

翔吾「…ん、」

北人「起きて、もう始まるよ」

翔吾「…あぁ、ありがと」

彼女の声と北ちゃんの声が重なって目が覚めて
それと同時に、今のが夢だったということに気づく。

まだボーッとしたまま体を起こして周りを見ると、椅子に座ってたメンバーが腰を上げて鏡の前に集まりだしている。

…そうだ、今から振り落としだ。

翔吾「…俺どんくらい寝てた？」

北人「いや、そんなに？でも、結構熟睡してるっぽかったけど」

翔吾「そっか、」

北人「よく椅子で熟睡できるね」

翔吾「あー、でもちょっと首痛い」

すごく長い時間、それも深く寝ていたような気分だった。

なんだ今の…
夢というより、自分の過去がそのまま再生されているような

青春というものをよく理解しきれていない俺が、唯一青春してたと思えるくらい
真剣に恋愛してたなって思う、学生の頃の夢。

にしても、もう5年も前の話。
なんで今更、こんな夢…？

確かにさ、街中歩いてるカップル見たり、彼女がいる友だちが惚気だしたりするといいなーって思うことはあるよ？

でも正直、恋愛してる暇があるかと言われたらない気がする
全然強がりとかじゃなく、その必要を感じないほど俺は今の生活に十分満足していた。

実際にクリスマスとかバレンタインデーとか、そういうイベントごとは大体仕事で、寂しいなんて思う隙もない

しょうもないことでメンバーと笑い合っている時間、人前でパフォーマンスしている時間、リハ後のダラダラ時間も
それが何よりも楽しいし

新しい仕事がもらえたとマネージャーから知らされる瞬間、それを親に喜んでもらえる瞬間が1番嬉しい。

力矢「じゃあ、もう1回確認の意味で最初やっとくか」

力矢さんを見ながら鏡に向かって必死に踊って、振りを体に叩き込んでいたら
5年という月日が経っているからか、そんな夢を見たこともとっくに忘れていた。

でも今思えば、この夢が全ての始まりだったのかもしれない

彼女に再会することになるなんて少しも思っていなかった

2019年の春