夢見る隙間（壱×北） (ページ5)

今日:13 hit、昨日:1 hit、合計:273,390 hit

早すぎる再会ページ5

.

あれから18時半までに19人のお客さんが来て、
おそらく幹事であろう人が個室から顔を出して、1人遅れてくるからもう始めて下さいって
宴会がスタートした

ここまではシミュレーション通り

段々と上がってくる声のボリューム
今日は壁に穴空いたり、トイレ詰まったり、障子破れたりしないといいな
店長の機嫌悪くなっちゃうから

小さな店といっても、所詮は居酒屋
いろんなお客さんがいるわけで

連絡先をしつこく聞いてくるおじさんとか
全然帰ってくれない悪そうな団体とか
文句ばっかりつけてくるお姉さんとか

でもお客さんだから大人しくしてるけど、裏で店長に吐き出してすっきりしてる。

また、チャイムが鳴った。
一瞬、今日は貸切ですって言いかけたけど、そういえば一人遅れてくるんだったね。

『いらっしゃいませ』

そう言いながら、暖簾をくぐると

「あ、遅れました」

帽子をとって、髪を整えている男の人。
この声、聞いたことがある
聞いたことがあるのに思い出せなくて

『…』

「…あ、いいですかね？」

そう言って、声が聞こえてくる個室の方を指さす。

『…あ、ごめんなさい。お待ちしておりました、どうぞ』

「どうも」

そう言ってニコっと笑って、
私の横を通りすぎた時に香った匂いで思い出した

今日の朝の香り
ぶつかった時の香りと声

絶対、そうだ。