気分じゃない ページ14
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北人side
北人「おつかれっすー」
今日は朝から1日、メンバー全員でテレビ収録やら、雑誌のインタビューやらをこなして、
もう夜の11時。
外を見ると、雨。
傘持っといてよかった〜
天気が悪い日は何となく気分が下がるから、俺はいつも家に直帰する。
樹「あれ、北人さんもう帰るんすか」
北人「うん」
樹「はやっ」
北人「何となく、じゃあね〜」
たまにご飯に行ったり、メンバーの家に行ったり、
そんなことはしょっちゅうだけど、
今日は気分じゃないんだ。
ずーっと一緒にいるから
そういう気分とか機嫌とか、メンバーお互い大体分かるもので
特に何とも思わないし、思われてないと思う
最近は有難いことに忙しくさせてもらってて、毎日が充実してる。
寮生活じゃなくなって、一人暮らしになってから自由な時間もできたけど
心のどこかで刺激が足りないなーと
そんな時に出会ったのが、Aちゃんだった。
見た目はどちらかと言うと大人っぽくて、でも話すと可愛げがあって控えめ、
そんなに話したことはないけど、きっと謙虚でいい子。
最初は何とも思わなかったけど、
近所さんってこともあって、偶然見かけることが多くなって
気づいたら、気にかけている自分がいた。
俺の事知らないのかと思ったら、知ってたり
俺が距離を詰めようとしても、向こうは恐る恐るで、
単純にもっと、仲良くなりたいなって。
そんなことを考えていると、後ろから水溜まりが跳ねる音が聞こえてくる。
その音に振り向くと、
北人「…Aちゃん？」
雨の中、傘もささずに走っている彼女がいた。
ボソッと名前を呼ぶと、こちらの方に目を向け、驚いた顔をする。
『あ…吉野さん』
北人「何してるの？傘もささずに」
『バイト帰りで…傘、なくって』
北人「ダメじゃん、風邪引いちゃうよ。ほら、入って」
そう言って、傘を差し出したら、
こんな状況にもかかわらず遠慮してくる。
『いや…申し訳ないです』
北人「だーめ」
『いや、でも…』
北人「もー、拒否権なんてありません！」
ちょっと強引かもなって思ったけど
俺は無理やりAちゃんの肩を寄せて、傘の中に入れた
こんなにびしょ濡れじゃ、もう手遅れかもしれないけど
まだ家までもう少しある。
放っておけるわけないでしょ
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作者名：はるの | 作成日時：2020年10月16日 11時
