鶏もも肉 ページ11
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はあ…
一人きりで歩くスーパーまでの道のりで、盛大なため息をついてしまう。
くるちゃんにあんなに言われたら、この私だって少し落ち込む。
私だって彼氏欲しいよ、普通に男の子とも女の子とも話せるようになりたい
誰かにとっては簡単なことでも、私にとっては大きすぎるチャレンジ。
そんな人間もいるってことをわかって欲しい。
近所のスーパーは家から徒歩5分くらい。
近くだから、車も何も持ってない私は本当に助かっている。
今日の特売は鶏もも肉と、玉ねぎか
何作ろうかな
たしか家の冷蔵庫に卵があったはず
『…親子丼かな』
一人暮らしの料理って、すぐ丼物にしがちじゃないですか?
私だけなのかな、ご飯におかず乗っければいいと思ってるの
でも野菜はちゃんと別でとるようにしてるから、そこは褒めて欲しい。
お肉売り場に行くと、お目当ての鶏もも肉は残り1個になっていた。
その1つを見つめるのは私と…もう1人。
先にその場にいたその人に、どうか手に取りませんようにとお祈りをする
むね肉でもいいけど、今日はもも肉が安いの!
「…あ、」
『…え?』
目を開けると、さっきまでお肉を見つめていた視線が私に向けられていた。
「あの、居酒屋の店員さん?」
あ…この人、芸能人の
ほくちゃん
「で、すよね?」
『あ…はい』
「なんか、偶然ですね」
本当に、すごい偶然だよ。
こんなに偶然に会えたら、本当に芸能人なのか分からなくなるよ。
「これ、どうぞ」
『え?』
「買いたいんですよね?」
と、言って最後のもも肉を渡してくれた。
芸能人の人に鶏のもも肉を手渡してもらいました。
こんなことはこの先一生できない経験でしょう。
「一人ですか?」
『…はい、』
「…じゃあ、良ければ一緒に歩きません?」
どういうわけか、私は芸能人と一緒に帰路を歩くことになった。
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作者名:はるの | 作成日時:2020年10月16日 11時