夢見る隙間（壱×北） (ページ2)

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香りと声ページ2

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遅延？
嘘でしょ…

大学までは電車で駅を５駅ほど乗って、いつも向かっている。
今日はいつも乗っている電車が遅れているらしい。

また、人身事故か、何かかな
こんな朝から、事故とか気分が良くない
駅のホームとかよくニュースに出てくるけど、そんなニュースを見る度悲しくなる

仕方ないから、のんびり向かうか
今日はなんとなくサボってしまいたい気分

大学なんて、ゆるゆるで
遅刻したって単位が取れれば何の問題もないわけだから
今日たった１コマ出ないくらいでは正直、何の成績にも響かない

他の人たちみたいに夜中出歩いたりとかそんなことしないから、
普段から授業には真面目に行っている
別に好きで真面目してるわけではないけど、やることが特にないから

まあ、たまにはいいよね
こんな日も

電車に乗っているだけでは見ることが出来ない景色、もの、ひと

こんなところにずらーっと桜咲いてるんだ
道沿いを走ってる人は毎日このコースを走ってるのかな
ちゃんと手を挙げて横断歩道を渡る幼稚園生、かわいいな

私だって、こんな風に周りのことに興味あるんだよ
だからさ、

友だちとはしゃいで、少しやんちゃなことをしたり
好きな人が出来て、頑張ってアピールしたり

他には… 他には…

「あっごめんなさい」

前から歩いている人にぶつかって、よろけてしまう。
少し体制を崩した私に、その人はすぐに手を差し伸べ、声をかけてくれた。

『こちらこそ、ごめんなさい』

周りをキョロキョロしながら歩いてるから、こんなことに…
珍しいことはするもんじゃないな、気をつけよう

「大丈夫ですか？」

『あっはい、』

「良かったです、それじゃあ」

いい匂いがした
すごく心地いい声だった
顔はよく見えない、帽子をかぶってるから。

たったそれだけ

それだけだったけど、

ぶつかった時のことが、
ぶつかった人の声と香りが

しばらく頭から離れなかった。