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モ「A・・・・・?」

モトキが私の名前を恐る恐る口に出して、ようやく停止していた思考が動き出した。


だめだ、

逃げなきゃ。


後ろに駆けだそうとしたけどそれよりも先にモトキが私の手をつかんだ。


モ「っ待って!」

『あっ・・・!』

モ「A・・・A、だよね・・・?」

『・・・・人、違いです。』

モ「じゃあなんで逃げようとしたの?」

『っ・・・・。』

言葉が出てこない。
どうしよう、どうしよう・・・!

私は俯いてひたすらにここから離れる方法を考えてた。

モ「……、何?シルク。」

え?シルク?

この場にはいないはずの人物の名前が聞こえ、モトキに目を向けた。
よく見ると、モトキはスマホを片手に持ちマイク付きのイヤホンを付けていた。

まさか、通話中……?

少し間があいてまたモトキがこっちに目を向けた。

モ「……A、今は時間が無いからゆっくり話は出来ない。だから、今日の19時に昔俺達がよく遊んでいた公園で待っていてほしい。」

『えっ………と…。』

断らなきゃ。でも…………




モ「お願い………ちゃんと、話がしたいんだ………!」


『っ………。』




急にいなくなった私に、怒ってるんじゃないかって思ってた。


なのになんで

そんなつらそうな顔するの?


モトキの手が震えて、握られている手に振動が伝わる。





『…わかっ、た………。』


そんな顔みたら、断れるわけないじゃんか……。



モ「!」

モトキがつかんでいた手を離して、
私は1歩2歩と後ずさりしてまた俯いた。

モ「・・・・・。」

『・・・・・。』

沈黙が痛い。
メンバーと・・・モトキと話すことが予想以上に怖かった。

その時、

「お待たせいたしました!開場します!順番にお入りください!」

スタッフの人の声が聞こえて、モトキがはっと顔を上げた。

モ「・・・もう戻らないと。」

『・・・・・・。』

モ「・・・・・A。みんなで絶対行くから。だから・・・待ってて。」


そういうとモトキは会場の裏手に向かっていった。

私はというと、しばらくぼーっと立ち尽くしていた。


あのつらそうなモトキの表情が頭から離れなかった。



きっと・・・いや、絶対に。

モトキにあんな顔をさせてしまったのは

私………。



そう思い至って、また考え込んでしまう。





6年前の私の選択は本当に正しかったのか。



今更こんなこと考えても遅いのに。

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作者名:リィオ | 作成日時:2018年5月1日 1時

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