三十七話 ページ37
「ノーコメントは許さない」
「…」
江戸川はもしかすると、少年の皮を被った大人なのかもしれない。そう感じる程に、江戸川の警戒心は高かった。
思えば謎だった。やたら私に警戒する割には近付くし、たまに作り笑いのようなものを貼り付ける。けれども時々大人びた言動、口調、頭脳…見た目通りの年齢とは思えなかった。年齢を聞いた事は無いが、もしかすると子供の姿のまま大人になった人なのか、と疑う事があった。
「…はぁ、分かったよ。どうせもうバレても問題無いし」
数十秒の睨み合いの末、江戸川は負けたように肩を落とした。…いや、バレても問題無いなら最初から言えよ。何の時間だよ。
「うん、したよ。利用」
「何故？」
「それに答えちゃもう公平じゃないよ。お姉さんの質問の内容は“お姉さんを利用したか否か”。ただそれだけで、その内容については質問の範囲外」
…成る程、そう来たか。確かに私はその質問しかしていないし、江戸川ももうこれ以上質問する気は無さそうだから公平にはならない。
だがやられっぱなしは尺じゃないんだ。借りについてもそうだが、私はやられっぱなしでは気が済まないタイプだ。
「…いや、あんたには答える義務がある」
「どうして？もう質問し合ったし、僕もお姉さんに付いて知りたい事はもう無いよ？」
「少年のお願いだよ」
私は少年の言葉に即座に答えた。…少年は私の言葉に不思議そうに首を傾げた。
ああ、どれの事か思い出せないのか。
「あんたは私の家に入れろと“お願い”をした」
＿＿＿『お姉さんの家に入っていい？』
＿＿＿『…人に聞かれるとマズイんだ。“お願い”』
「これは立派な借りだ」
「…あの時のか」
流石に想定外だったのか、少年の表情はみるみる苦しいものに変わった。恐らく私がそこを突くとは思いもしなかったのだろう。
残念、確かに学生は途中でやめた。大学には入らなかった。だが教養の無いバカ程でも無い。…と思う。
「あんたが言った“公平”に則ったよ、私は」
＿＿＿最初に仕掛けたのは江戸川だ。
要するに情報の交換こで駆け引きみたいなものをしていたわけだ。チップは相手が知りたいという自分の情報。互いに“公平”なルールでどれだけ重要な情報を聞き出して自分が得をするかというもの。
それをこの少年は無自覚だろうが仕掛けたのだ。今更棄権なんてさせない。
「…わーったよ、言えばいいんだろ」
どうせ答えるまで返してくれないんだろ、と諦めたように少年は口を開いた。
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メランコリスト - Whiskyさん» 個人的にもスコッチさんは好きだったので生かしました。最後までご覧下さりありがとうございます。楽しんでもらえたのなら作者として嬉しく思います。 (2019年8月17日 1時) (
レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
Whisky - やっぱりヒロは生きてたんですね！押しなので嬉しいです。すごく面白かったです。 (2019年8月17日 0時) (レス) id: e4b3f2a326 (このIDを非表示/違反報告)
メランコリスト - まゆさん» この作品を見て下さりありがとうございます。続きが気になってもらえるとは…これからも面白いと思ってもらえるよう頑張ります。コメントありがとうございました。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年8月14日 19時) (レス) id: 35cf1a0a87 (このIDを非表示/違反報告)
メランコリスト - 氷雨さん» まさか応援コメが来るとは…ありがとうございます。ご期待に添えられるかどうかは分かりませんが、頑張ります。コメントありがとうございました。 (2019年8月14日 2時) (レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：メランコリスト | 作成日時：2019年8月11日 15時
