三十五話 ページ35
「…あと一つだけ」
「うん、それで公平だね」
「あんたが私にわざわざ会って、色んな事を話すメリット」
この少年については全く知らないし、なんだか首を突っ込む気にもなれない。だが、この少年は私には言わない、という選択も取れたはずだ。
「…てっきり僕の正体についてかと」
「あんたのプロフィールに微塵の興味も無い」
私がバッサリと言うと、反応に困ったように江戸川が狼狽えた。だが数秒もしない内に立ち直り、
「…お姉さんは例のハッカーに利用されてた可能性があるんだ」
と麦茶少ないグラスを手に、告げた。そして私はその言葉に自分のグラスへと伸ばす手を止めた。…利用。という事は、私はいいように使われていたということになる。
…不快感が心の奥から込み上げてきた。
「あくまで可能性だよ。…ごめんね。お姉さんをお巡りさん達が見張っていた理由は二つあるんだ」
一つは、私が例のハッカーという可能性を潰す為。江戸川自体、本当に私がハッカーなのか、と疑っていた節があったそうだ。
そして、そのもう一つというのが…
「本物の噂のハッカーを、見つける為」
…それがもしかすると、突然解放された理由だったりする？
特に根拠も無い勘だが、話の雲行きから判断出来た。それを江戸川に告げると「そうだよ」と答えられた。
「…結果、候補は二人に絞られた」
「…候補…二人…」
ただの他人に私が利用されるわけがない。ただの引きこもりだ、どうやって利用しろと？
…私を利用するには、近付くのが一番だ。しかし私を利用するにもそのメリットは？私を利用して何になる？そして、私を利用しようと近付いたという事は…
「…藤堂光さん。そして、山江淳さん」
私の知っている、人。
…案の定、藤堂さんとおっちゃんの名前が出てきた。
「私を利用する、メリットは？」
やがて私は震えた声で、江戸川に尋ねた。江戸川は私の様子に気付いているのかごくり、と唾を飲み込みながら口を開いた。
「…“隠れ蓑”。もし命を狙われたらの…生命保険、だよ」
隠れ蓑。確かに恨みなどを買われて殺されるとしたら、その矛先は私に向く。…その盾に私はなる。だから、本物は生き永らえることが出来る。
「お姉さんを狙う組織達を潰す理由についても…自由に動けるようにする為じゃないかな。組織を潰すくらい容易いのならお姉さんを守れるし、それにもし何かあってもお姉さんを囮に時間稼ぎが出来る」
私は絶句した。そして、下を俯いた。
江戸川が一つ息を吐いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 169人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メランコリスト - Whiskyさん» 個人的にもスコッチさんは好きだったので生かしました。最後までご覧下さりありがとうございます。楽しんでもらえたのなら作者として嬉しく思います。 (2019年8月17日 1時) (
レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
Whisky - やっぱりヒロは生きてたんですね！押しなので嬉しいです。すごく面白かったです。 (2019年8月17日 0時) (レス) id: e4b3f2a326 (このIDを非表示/違反報告)
メランコリスト - まゆさん» この作品を見て下さりありがとうございます。続きが気になってもらえるとは…これからも面白いと思ってもらえるよう頑張ります。コメントありがとうございました。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年8月14日 19時) (レス) id: 35cf1a0a87 (このIDを非表示/違反報告)
メランコリスト - 氷雨さん» まさか応援コメが来るとは…ありがとうございます。ご期待に添えられるかどうかは分かりませんが、頑張ります。コメントありがとうございました。 (2019年8月14日 2時) (レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メランコリスト | 作成日時：2019年8月11日 15時
