四十八話 ページ48
「…お姉さん、あれで良かったの？」
「いい」
不貞腐れたように車の外の景色を眺めながら、私たちの住む街へと帰ろうとしていた。その車は、前の運転席と助手席は安室と私だけだったが後ろはぎゅうぎゅうだった。沖矢さんの膝の上に乗った江戸川、ヒロお兄さん、そしておっちゃん。…後部座席は何ともむさ苦しかった。
そしてその内のおっちゃんはへこんでいる。ヒロお兄さんもいづらそうにしているのか表情が硬い。
「因果応報だ」
おっちゃんには、
＿＿＿『私を巻き込んだり黙って変な事に首突っ込んだら、私もおっちゃんのある事無い事ネットに流すしおっちゃん嫌いになる』
最後の嫌いになる、が聞いたのかおっちゃんはあれから静かだ。何だ、存外子供らしいところもあるじゃないか。
「…すみませんでした、巻き込んで」
ハンドルを握る隣の安室から、謝罪の言葉が聞こえてきた。…巻き込んですみません。それは、ハッカーだと勘違いしてましたすみません、という意でもあるのだろう。だが元凶はおっちゃんだし、この人は騙されたに過ぎないのだ。そもそも怒っていない。…相変わらずその姿は直視出来ないが。
「気にしてないです、ぜ」
ゼロお兄さん
私はそう言いかけてハッとした。
「…ぜ？」
「…舌噛んだだけです」
痛い痛い、とアピールするように舌を出したところ誤魔化せたのかそれ以上安室は追求してこなかった。…しまった。ついうっかりそのあだ名で呼んでしまうところだった。
安室なんちゃら。…下の名前は忘れたが、ヒロお兄さんとよく一緒にいた少年だったことは覚えている。ただ、米花町で久し振りに会った時はこんな名前だったか、と疑問に思ったし性格もまるで違ったから、最初は別人だと思っていた。
そしてこの人が両親を殺した犯人だという事は、勘付いていた。
…でも誰にも言っていない。警察に言うつもりも無かった。というかどうせ捕まりやしないだろうし。
＿＿＿『ごめんなさい』
自分の部屋にいた時のあの罪悪感に押し潰されそうになっている声色。…思い出す度に、らしくもなく情が移ってしまった。
自分でもやれやれ、と呆れたように勝手に肩を竦めた。それに話なら、後でいつでも聞ける。
後でたんまりと聞かせてもらうからな。
そして日が丁度真上に来た頃、私たちは自分の街へと帰ってきた。
私は家に無事返され、家に帰ると先生が待ち受けてきた。くそ可愛い。
そして私は再びしばらくの平和を手に入れた。
…のか？
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メランコリスト - Whiskyさん» 個人的にもスコッチさんは好きだったので生かしました。最後までご覧下さりありがとうございます。楽しんでもらえたのなら作者として嬉しく思います。 (2019年8月17日 1時) (
レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
Whisky - やっぱりヒロは生きてたんですね！押しなので嬉しいです。すごく面白かったです。 (2019年8月17日 0時) (レス) id: e4b3f2a326 (このIDを非表示/違反報告)
メランコリスト - まゆさん» この作品を見て下さりありがとうございます。続きが気になってもらえるとは…これからも面白いと思ってもらえるよう頑張ります。コメントありがとうございました。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年8月14日 19時) (レス) id: 35cf1a0a87 (このIDを非表示/違反報告)
メランコリスト - 氷雨さん» まさか応援コメが来るとは…ありがとうございます。ご期待に添えられるかどうかは分かりませんが、頑張ります。コメントありがとうございました。 (2019年8月14日 2時) (レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：メランコリスト | 作成日時：2019年8月11日 15時
