二十三話 ページ23
「すみません、待ちましたか？」
「いえいえ、僕もついさっき来たばかりなので」
シャワーも浴びて先生にご飯を与え、着替えも済ませた私は沖矢さんとカフェの前で待ち合わせていた。…あ、別にポアロではない。
「にしても珍しいですね、西川さんから誘うなんて」
「…私も誰かを誘うのはいつぶりですかね」
本当に他人を誘うなんて何ヶ月ぶりだろうか。あまり交友の無い人物を誘うなんて思いもしなかった。…それも、そこそこの人で賑わうこの店で。
いや、だってお金ケチりたかったし。
この店を選んだ理由だが、なんと期間限定ケーキが販売されている上に店を開いて何年目ということで割引がされているのだ。賑わっている場所は苦手なのだが、大好物である新鮮なフルーツタルトが安く食べれると考えたら多少は我慢出来る。
「昨日はすみませんでした」
席に着いて注文も済ませた頃、私は頭を下げて沖矢さんに謝罪をした。沖矢さんは温厚な人だが、流石に昨日の件では少しは怒ったかもしれない。
そういう時はさっさと謝っといて反省してろって父さん言ってたし。
「いえいえ、気にしていませんよ」
しかし返ってきた返答は意外なものだった。てっきり怒ったかと思って少し震えていたので驚いた。
「お詫びと言ってはなんですが、これ…」
私は予め用意しておいたお詫びの品が入った紙袋を取り出し、沖矢さんに手渡した。そこで丁度店員さんがこちらに来て、頼んだケーキやお茶がテーブルの上に置かれた。
「これは…ありがとうございます」
沖矢さんは中は確認しなかったが、紙袋を横に置いた。
「…何かあったんですか？昨日はいつもより気が立ってたように見えましたが」
フォークを手に取ってケーキに刺そうとした時、沖矢さんはそんな事を尋ねた。…気が立ってたように見えたのか。いつも表情には出づらいのだがよく気付いたものだ。
「安室さんと僕が家の前で言い合いをしていたからですか？」
「…それは…すみません、これから話すことは安室…さんに秘密にしてくれるなら」
いけないいけない。いつも心の中では呼び捨てにしているから安室と言ってしまうところだった。
沖矢さんは静かに頷いたので、私は言いづらそうに口を開いた。
「…ワケあって金髪と褐色が苦手で」
「ワケ？」
「詳しくは…無理ですが」
成る程、と沖矢さんは納得したのか頷いた。
…安室の話をしていたら何故か少し食欲が無くなってしまった。
「すみません、少し席を外しますね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 171人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メランコリスト - Whiskyさん» 個人的にもスコッチさんは好きだったので生かしました。最後までご覧下さりありがとうございます。楽しんでもらえたのなら作者として嬉しく思います。 (2019年8月17日 1時) (
レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
Whisky - やっぱりヒロは生きてたんですね！押しなので嬉しいです。すごく面白かったです。 (2019年8月17日 0時) (レス) id: e4b3f2a326 (このIDを非表示/違反報告)
メランコリスト - まゆさん» この作品を見て下さりありがとうございます。続きが気になってもらえるとは…これからも面白いと思ってもらえるよう頑張ります。コメントありがとうございました。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年8月14日 19時) (レス) id: 35cf1a0a87 (このIDを非表示/違反報告)
メランコリスト - 氷雨さん» まさか応援コメが来るとは…ありがとうございます。ご期待に添えられるかどうかは分かりませんが、頑張ります。コメントありがとうございました。 (2019年8月14日 2時) (レス) id: 8d9394cd19 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メランコリスト | 作成日時：2019年8月11日 15時
