もし力があったなら5 (ページ5)

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「あの部屋にいたときも、あの車の中も、実は近くにヒョノがいたんだよ。あいつの能力で、ユンチョルは記憶を消すことができた。本来は映すだけしかできないはずなのに。」
ユンギヒョンやジョングクの記憶が消されたときのことを思い出す
あのきれいなジョングクの目が忘れられない
じっとりと冷や汗がでてくる

「この前、テヒョンに何か問いかけたな…？」
ヒョサンが僕の目をのぞき込んで言う
そうだ。本来できなかったことができたんだ
当たり前のように
「それも、ヒョノの能力ってこと…？」
必死に声を絞り出していうと、ヒョサンは頷いた

「やたら感情が入り込むのも、あいつがそばにいたからか」

「そうだ。ヒョノの能力は、能力を操る。」
「なんだよそれ、なんでもありじゃんそんなの…」
「じゃあ聞くが、ソクジンの能力はなんだったと思う…？」

優しかったヒョンの顔を思い浮かべる
何も能力はなさそうだったけど、僕たちを裏切ったから、なにかあるんだろう

「なに」
僕が低くつぶやくと、ヒョサンはのどの奥でくつくつと笑った

「教えないよ」
「なんだよそれ。」

「仲間を助けたいんだろ」
ヒョサンがまっすぐに僕を見つけている
当たり前だ

「助けるためにここにいる」

そうだ。
僕は僕たちを裂いた恨んでも恨みきれないここにいるって決めたのは、みんなを助けたいからだ
そのためにはなんでもやると覚悟したはずだった。

僕がそういうとヒョサンは僕の顎をぐっと掴んだ
「じゃあ覚悟を決めろ。全員を欺く覚悟を決めろ。仲間すら、騙すんだ。」
「どういう意味だよ」

欺く…？
全く意味がわからない
ヒョサンがいう真意もわからない。

「俺はお前たちの味方だ。この本部を潰すつもりだ。」
「は？」

おいおい、本気なのかよこいつ。
そう思ってヒョサンの方を見ると、いたって真剣だ。
今までにないくらい。

「お前も一緒にやらないか」
「…なにそれ、スカウト？」
「ま、そんなとこだな」

信用していいのかよくわからない

こいつは僕たちを裂いたとき、そこにいたんだぞ？
でもホソクヒョンの味方でいてくれたとも聞く
でもジンヒョンのこともよく知ってるようだ
信じていいのか？

ここで信じたらどうなる？
いや、こいつに頼らずにみんなを助けられるのか？
正直、わからない。

だとしたら、選択肢は一つだ。

「僕は、みんなとまた一緒にいられるならなんでもいい」

僕の言葉を聞くと、ヒョサンは満足そうにうなずいた。