もし力があったなら5 (ページ11)

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暗い部屋で今日もキャンバスに向かう
少しずつ頭にあるものを描き続けている。
そうして少しずつ浮かびあがる絵
まだこれがなんなのかはわからない

「人か？」
今日の食事を運びに来たドンソンさんが言う
「でも誰なのかわからないんです」
俺がそういうと、そうか、と呟いて俺が描いた絵をじっと見つめる
「お前によく似ているけど」
ドンソンさんはそういうと、部屋からでていった
「俺に似ている？」
改めて見てみると、確かに似ていないこともないけど、確実にこれは俺じゃない
なんで自画像なんか書くんだよ

そうおもいながらも筆を進める

「…ヒョン…」

自分でつぶやいておいて自分が一番驚いた
「まただ、ヒョンっていったい誰なんだよ…」

なんとなく描くのが嫌になってベッドに寝転がる
ドンソンさんが持ってきてくれた食事を食べる気にならなくて、そのまま目を閉じる

「おい、ジョングク、また食ってないのか」
誰かの声がする
「そんなんじゃ大きくなれないよ～？」
「また僕の勝ちだね」
「へへっ、俺でも勝てそう」
誰なんだよ、なんで俺を知ってるんだよ
「知ってるに決まってるだろ、ずっと一緒だったんだから」
どういうことだよ
「よく思い出せ、ジョングガ」

はっとして目が覚める、
勢いよく起き上がって、自分の描いた絵を見る
「ヒョンだ…ヒョンだ…」

確実なイメージが自分の中で生まれてくるのを感じて、キャンバスに向かう
忘れないうちに書きなぐる

出来上がった絵を見て驚いた

知らない間に頬を涙が伝う

「ヒョン！！！」

叫んでみても絵は答えない

頭がぐらりと揺らいで激しく痛む

次々と脳裏に浮かんでくる映像

「ユンギヒョン…ナムジュニヒョン…テヒョニヒョン…ホソギヒョン…ジミニヒョン…Aヒョン…ジンヒョン」

大好きだった兄たちの顔が次々に浮かんでくる

「なんで、忘れちゃってたんだろう」

涙が止まらない

会いたい、今すぐに、会いたい

そう思うと、身体が勝手に動き出す

小さなドアを開けようとするが鍵がかかってあかない

「くそ…」
小さくつぶやいて、ドアに体当たりをする
当然開くわけがない。
「くそ、くそ！！！」
その場にしゃがみ込む
早く、みんなのところに行かなければ…ここから出なければ…

気持ちだけが加速していくが、体は前には進まない

ヒョンたちならどうするだろうか

そう思うけど、目の前の扉は厚く、重い。