もし力があったなら2 (ページ5)

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黙って歩く二人。
「ねえ、ひょん、」
「なあA」
「なに、」
二人の声が重なり、Aが譲る
「ゲームしようか」
ホソクがそういって笑った

Aは不思議そうな顔をする
もう雨はあがっていた

「なに、ゲームって」
「このレンガの、色の濃いほうだけ踏んでいいゲーム」
「なにそれ」
「薄いほう踏んだらワニに食われるよ。マンホールはセーフね」
わけがわからなかったが、ホソクがスタート、と勝手に始めて、そこ、わにいるぞ、なんていうので濃いほうに移動する

そのままふたりでぴょこぴょこと移動しながら家へ向かう

Aは何も言えなかった
それはホソクが何も言わなかったからだった。
あんなことがあって絶対悲しいのに。
能力を使わなくても、ホソクの気持ちはわかった
それでもホソクが笑うから、Aはなにも、言えなかった。

タイルの道が終わり、アスファルトを進んでいく
もう雨はとっくに止んでいるのに傘はさしたままだった
沈黙がうるさい
なにをいおうか、お互いに探っているようだった

触れないほうがいいのかな、なんて、思った
でも、自分のずるさにも気づいた。

地下へ続くドアを開ける
二人で黙って階段をひたすら降りていく

部屋に続く、最後の扉。
その前でAは言った
「ヒョン、かっこよかったよ」
そういってホソクをみると、一筋の涙が光った
それでも笑って
「だろ？」
という。
Aはたまらなくなってホソクに飛びついた

「ヒョン、すっげぇかっこよかった。今までで一番」
「だ、ろ」
「うん。強かった」
「あ、ったりめぇだ」
Aに抱き着かれ、肩に顔をうずめて泣くホソク
背中をさすってやる
「あー、でも殴るときに腰が引けてたかな」
Aがそういうと、
「おまえなあ」
とホソクが笑った
「さ、帰ろう」
ホソクは涙を袖でぐい、と拭くと、扉をあけた

中は明るくて暖かかった。
ジミンが怪我だらけの二人を見て慌ててジンを呼びに行く
テヒョンとジョングクが二人を椅子に座らせる
ジンが「なにやらかしたの」というがその声色は優しい
ユンギはなにも言わずに二人の肩をたたいた
テヒョンが、Aが持つ袋をみてなにこれ！という
「お土産。ぼろぼろだけど」
とホソクが笑った
ジミンが「紅茶入れます」とお茶の準備をする
ばたばたと手伝いに行くジョングクとテヒョン

ジンによる手当も終わり、みんなでボロボロのクッキーを囲んでおやつにした
少し苦い味がした。

天気、雨、終わり。