No. 6 友達(仮) ページ9
数日後、雄英高校入学式の日がやってきた。
朝一の電車に揺られること1時間半。
目的地に近づくにつれ、同じ雄英の制服を着る生徒も多くなる。
倍率が高いとはいえど、ヒーロー科や普通科、その他諸々を含めば11クラス。
それが3学年もあるのだ。超マンモス校である。
『……で、なんでロキくんが隣にいんの？』
「俺が乗った車両にたまたまお前がいただけだ」
わざとらしく焦凍が目をそらす。
嘘つけ。お前、朝からLI⚪E使って
焦凍今日
焦凍何時の電車に乗るんだ?
って聞いてきただろ。
『あのな？ロキくん結構有名なんだからさ、アタシなんかと一緒にいちゃダメだろ』
「神鳴沢の方が有名だ。お前の親父さん万人受けするタイプだし」
『んん！そういう問題じゃないんだよね！』
もう二度と会わないって腹括ってたのに調子狂っちゃうだろ。
「つーか、もう着くぞ」
面倒くさいことになると思ったのか、焦凍は早々に会話を切り上げると、私の手を引いて車内を出る。
遠くの方から、
「あれってさ、付き合ってんのかな？」
「んーどうだろ。でも、美男美女だよね！」
という会話が聞こえてきたが、この際だからはっきり言わせてもらおう。
焦凍が勝手にひっついてくるだけで、付き合ってもいないし、友達以上恋人未満でもない。
ただの友達(仮)だ。
とまぁそんな具合で、先程の会話に脳内で文句を言っていると、雄英の校舎が見えてきた。
うん、大きい。語彙力が低下するくらい大きい。
迷子になる可能性を考慮して早めに家を出てきたのは正解だったかもしれない。
『それじゃあ、アタシとお前はクラス違うから。もう行くな』
焦凍の返事を待たずに、私は人の群れを器用に避けながら進んでいく。
そういえば、父さんは雄英高校ヒーロー科の卒業生だと言っていた。
あの父さんのことだ。
さぞかし優秀な生徒だったに違いない。
『ま、それなりに頑張るとしますか』
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作者名：蜜柑星 | 作成日時：2020年12月4日 22時
