きみはスパイに向いてない【MHA】【ヒロアカ】 (ページ6)

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No. 4 卒業ページ6

『あ、もうほとんどの奴帰ってんじゃん』

3年の下駄箱を覗くと、スリッパが残っているのは私たちを含んでも12人ほど。

いくら卒業式でも、こんな時間までいる生徒は少ないか。

「どっかの誰かさんが居眠りなんてするから……」
『うるせぇ。生理現象だ、生理現象』

ねぇ、人間の三大欲求って知ってる？
その一つに「睡眠欲」が含まれてんの。敵うわけないじゃん、そんなのに。

『つーか、写真撮るにしてもカメラは？』

3年間愛用してきたシューズに履き替えると、
でかでかと「卒業」の二文字が書かれた立て看板に目をやる。

「スマートフォンでいいだろ。姉さんが持ってきてくれた」
『んじゃ、早速撮りますか」

二人で立て看板の前に立ち、焦凍がスマートフォンのシャッターを切る。

カシャ……カシャ……カシャ。

『……ロキくん？』
「わり、どうしてもボヤける」
『あーわかった。アタシがするから貸して』

まさかの機械音痴。

私は、焦凍が持つスマートフォンを受け取り、自分でシャッターを切る。

カシャ！

ボヤけていないことを確認すると、
家に置いてきた自分用のスマートフォン宛に撮ったばかりの写真を送った。

「撮れたのか？」
『うん！上出来』

焦凍はスマートフォンに映る写真を見て、柔らかい笑みを浮かべる。

一瞬、焦凍の周りに花畑が見えたような気がしたが、気のせいということにしておこう。

……にしても、今日で中学校卒業か。
実感がわかないもんだな。

同じ高校へ進学するとはいえど、
同級生(・・・)として顔を合わせるのは体育祭と文化祭くらいだろう。

今はそう思わないだけで、寂しいと感じるのだろうか。

『ねぇ、ロキくん。もしもさ、アタシが敵になりたいって言ったらどうする？』

私が聞くと、焦凍は少しの間を置いてから答えた。

「お前のやりたいことがそれなら何も言わねぇ。
ただその時には、俺がヒーローになって真っ向からお前を連れ戻すだけだ」

『……そっか、ロキくんらしいや』

焦凍なら、私が道を踏み外したとしても助けてくれるのかもしれない。

そんな淡い期待を抱く自分がいることに虫唾が走る。

これは私が選んだ世界だから。

誰にも頼ることはしないって決めたんだよ。