処方箋.23 ページ24
「さあ、なんででしょうか」
「え、えええ……」
私がすっかり困り果てると、先生は小さく吹き出した。
「悪い、ついからかった。 そんな顔するなって」
「からかったって……私はおもちゃか何かですか……」
顔は苦笑いを浮かべてるけど、心臓が煩い。
耳だって、真っ赤かもしれない。
髪下ろてるから、大丈夫だよね？
わああ、お願いバレないで。
「理由だが……笑うなよ」
「……」
「おまえの合格を、一番に聞きたかったから」
先生の言葉を、音として聞き、言葉として理解した途端。
ドクン！って、変に心臓が跳ねた。
目線の先には、至極真面目な顔をした先生。
とても冗談を言っている顔には見えない。
口ごもることすら、出来ない。
先生の瞳に映る私は、ゆらゆら揺れていた。
先生、それって。
……誤解、してしまいそうです。
「……私だから良かったですけど、そういうこと他の女子生徒に言ったら勘違いしちゃいますよ」
先生がそんなこと言うなんて意外です、なんて言葉も付け足して、痛む胸は無視をして笑みを貼り付けて言った。
絶対に、笑えていないだろうけど。
すると予想外なことに、頭上からは、はああぁぁぁ……とそれはもう盛大な溜め息。
……こんなこと言うなんて呆れられた？
どうしよう、嫌だ。
「先生、あの、」
「おまえ以外にこんなこと言うわけないだろ……まさかおまえ気付いてないのか？」
「……え？ 気付く……？ 一体何に……え、え、え？」
難関校の数学の過去問より頭を使う。
先生の前半の言葉にカッと顔が赤くなり、終盤の言葉に何のこと……と困惑する。
【気付いてない】……
気付いてないこと……
前半の文脈から察して……
察し……
……察すると！？
「嘘だろ気づいてなかったのかよ……ま、気付いたみたいだが」
「……勘違い、じゃないですよね？」
「……どうだろうな」
声にならない悲鳴を上げて、その意味を察した。
私が間違えていなければ、先生も、私のことを……好きって、ことで。
赤面症でもないのに顔に熱が集中して、不可抗力で顔が赤くなってしまう。
いや、多分顔どころか、耳も首筋も赤い気がする。
先生の顔が見られない……！
「顔真っ赤」
「誰のせいだと思ってるんですか……」
「俺だな」
そっと頬に何かが触れる……先生の指だ。
私の好きな、先生の手。
無骨で、少しカサついていて、傷の多い、色んなものを守って来た手。
初めて触れられたその手は、火照った頬とは反対に、ひんやりと冷たかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 399人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つめきわに - 違うお話ですみません。コメント失礼します。かりそめて接吻のパスワードはお教えいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。 (2021年3月23日 23時) (
レス) id: fa5f26b543 (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - ゆづしおさん» ぐはぁっ！「大好き」だなんてそんなありがとうございます！「先生の字が欲しいです！」って夢主様が言ったら「合理的じゃない」云々言いそうですけど、結局は書いてくれそうですよね…尊い…… (2020年3月7日 12時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆづしお - この小説、心情描写がもう素晴らしくて大好きです…！！……あ、相澤先生の生字…金出してでも欲しいですな、10万までならOKですけど…プライスレスですよねぇ… (2020年3月6日 21時) (レス) id: a103d81c3f (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - 絢兎さん» 順番前後してしまいすみません！教師から生徒……書いていて最高です笑 (2020年3月6日 21時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - xxvl6w6lvxxさん» 返信遅くなりすみません！相澤先生の字、生で見てみたいですよね……お気持ちすっごくわかります！ (2020年3月6日 21時) (レス) id: ec408804c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Able | 作者ホームページ：
作成日時：2019年12月26日 17時
