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*yoohei side





「こちらです!」




スタッフに誘導されながら、
彼女がステージ袖へ入ってきた。




あんな別れ方をしたから、
もしかしたら俺に近づくために嘘を吐いて
ここに来たのかもしれないとも思った。




助けてくれる気はないんじゃないかとか、

Aの匂いでこんな状況に陥った俺を
嘲笑いに来ただけなんじゃないかとか、

最悪、弱ってるところにトドメを刺されるのかもとか。




でもこの牙が収まらないままじゃ、
どのみちステージには戻れないし


そうなれば周りに正体がバレて、
吸血鬼が実在した!なんて
マスコミにでも騒ぎ立てられれば
世界中を逃げ回ることになる。




でも、どうせそうなるんなら、
最後にAの顔が見れればそれでいいかなって
思ったんだ。




「A、・・・」




久しぶりに彼女の顔を見たら
俺の口から ふっ、と
安堵とも溜め息とも取れない呼吸が零れた。


その逆に俺を見た彼女はやっぱりって顔をして
ごめんなさい、と小さく呟いた。




「A、来て・・・」




腕を伸ばすと彼女が俺の手を取って
きゅっと握ってくれた。




渇ききった体はもう息も絶え絶えで、
彼女の体にすべてを預けるように倒れ込んだ。




「洋平さんっ、大丈夫ですか?」




俺の様子に彼女が切羽詰まった声を上げる。




「Aさ、昔・・、俺の弱点、
ずっと探してた、でしょ?」

「そんな話あとでいいからっ、早くっ、」

「あれからしばらく経ったけど、分かっ、た?」




彼女がふるふると首を振る。




俺も分かんなかったよ。


好きなのに、愛してるのに
Aを拒絶してしまったあの時は


こんな風になるなんて想像も出来なかった。




「俺の弱点ね、Aがいなくなる、こと」

「そんなのっ、・・知り、ませ、でしたっ、」




涙声で言葉を絞り出した彼女に
ほんとに俺のこと助けようと思って
来てくれたんだなって分かって


だけどこの俺に、
まだそんな風に思ってもらえる余地があるのかな。




「A・・、俺、加減できるか、分かん、ない」




そう言うと彼女が黙って頷いてくれたから
近くにあったタオルを手に取って


周りから見えないように隠しながら
彼女の柔らかい首元へ口を付けた。





*

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叢雲(プロフ) - remonedo0130さん» ご覧いただけたようで良かったです(^-^) (2019年4月23日 0時) (レス) id: 2d202b4602 (このIDを非表示/違反報告)
remonedo0130(プロフ) - ありがとうございます。無事に観覧できました! (2019年4月22日 22時) (レス) id: e8e3ac6beb (このIDを非表示/違反報告)
叢雲(プロフ) - remonedo0130さん» 初めまして。ご覧いただきありがとうございます。マイページの設定→コンテンツ設定からR18フィルタを確認してみてください。表示される設定にしてからログインした状態でunder groundで検索していただくか「この作者の全作品を表示」からご覧いただけると思います。 (2019年4月21日 20時) (レス) id: 2d202b4602 (このIDを非表示/違反報告)
remonedo0130(プロフ) - 初めまして。偶然こちらのお話を見つけて一気に読んでしまいました(*^^*)素敵なお話ありがとうございます。under groundも読ませて頂きたいと思ったのですがログインしてても見つける事ができませんでした(>_<)何か方法教えて頂ければ幸いです。 (2019年4月21日 11時) (レス) id: e8e3ac6beb (このIDを非表示/違反報告)
叢雲(プロフ) - 吉野さん» 完結しました〜。最後までお付き合いいただきありがとうございました。いつも楽しみにしていただいて励みになりました(^-^)続きについてはまだ何も思い浮かんでいないので思い付いたらの話になってしまうんですが、気長にお待ちいただけると幸いです(^_^;) (2019年4月7日 0時) (レス) id: 2d202b4602 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:叢雲 | 作成日時:2019年3月9日 0時

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