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*yoohei side





曲の歌い終わりで急いで舞台袖に引っ込んだ。




そんな予定は一切なかったから、
メンバーはぎょっとしながら即興でアレンジを加えて
演奏を伸ばしてくれている。




もう限界だ。


喉からどころか体中から手が出そうなくらい
全身が血を欲してる。




客席から見えない場所にしゃがみ込んで
肩で大きく息をした。




ふーッ、ふーッ、と
口から荒く吐き出される呼吸に




「どうしました!?」




大慌てでスタッフが駆け寄ってきて
それを手で制した。




“近づくな” の合図に足を止めた
スタッフのスニーカーがきゅっと音を立てる。




「大丈夫ですか?」




遠巻きにそう聞かれて。




今、近づかれるのはヤバイ。
堪えきれなくなって牙が生えてきてる。




もしかしてこれがAの狙いだったの?
だとしたら大成功だ。


このままじゃステージに戻れないし、
かと言って時間が経てば牙が戻るとも限らない。




手っ取り早く元に戻すには、
やっぱり吸血するしかない。


背に腹は代えられないから
どんなに不味くても無理矢理飲み込むとして、


ただ、人が多すぎる。




人の記憶を消すのにも限度があるし、
スタッフに囲まれたこの状況で
誰にも気付かれずに噛みつくのは難しい。




・・・どうすればいい?




「洋平さん」




その時、別のスタッフから声を掛けられた。




「あの、洋平さんが苦しいの治せるって人が今、
関係者入り口に」

「なに言ってんだこんな時に!」




傍にいたスタッフが声を荒げる。




「でもすごい勢いで絶対伝えてくれって言われて
尋常な雰囲気じゃなかったんですよ!」




人を近づかせようとしない俺に、
事態が掴めずスタッフにも余裕がなくなって
ちょっとした小競り合いになり始めた。




「あの、Aって言えば分かるって
名前を言われたんですが」

「・・・ここへ呼んでください」

「真に受けるんですか!?」

「大丈夫、知り合いです。
彼女をここへお願いします」




狼狽えるスタッフに
口元を見られないよう隠しながら




「彼女が来たら席外してもらっていいですか」




と伝えた。





*

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叢雲(プロフ) - remonedo0130さん» ご覧いただけたようで良かったです(^-^) (2019年4月23日 0時) (レス) id: 2d202b4602 (このIDを非表示/違反報告)
remonedo0130(プロフ) - ありがとうございます。無事に観覧できました! (2019年4月22日 22時) (レス) id: e8e3ac6beb (このIDを非表示/違反報告)
叢雲(プロフ) - remonedo0130さん» 初めまして。ご覧いただきありがとうございます。マイページの設定→コンテンツ設定からR18フィルタを確認してみてください。表示される設定にしてからログインした状態でunder groundで検索していただくか「この作者の全作品を表示」からご覧いただけると思います。 (2019年4月21日 20時) (レス) id: 2d202b4602 (このIDを非表示/違反報告)
remonedo0130(プロフ) - 初めまして。偶然こちらのお話を見つけて一気に読んでしまいました(*^^*)素敵なお話ありがとうございます。under groundも読ませて頂きたいと思ったのですがログインしてても見つける事ができませんでした(>_<)何か方法教えて頂ければ幸いです。 (2019年4月21日 11時) (レス) id: e8e3ac6beb (このIDを非表示/違反報告)
叢雲(プロフ) - 吉野さん» 完結しました〜。最後までお付き合いいただきありがとうございました。いつも楽しみにしていただいて励みになりました(^-^)続きについてはまだ何も思い浮かんでいないので思い付いたらの話になってしまうんですが、気長にお待ちいただけると幸いです(^_^;) (2019年4月7日 0時) (レス) id: 2d202b4602 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:叢雲 | 作成日時:2019年3月9日 0時

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