LAST MINUTE：2nd

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ライブ中、洋平さんが突然ステージから捌けた。




演奏は何事もなかったように続いてるから
客席はあまり不思議に思う様子もなく
流れる音に耳を傾けている。




だけど口元を隠すように
足早にステージ袖へ歩いて行く洋平さんと
それに少し慌てた様子のメンバー。




・・・私のせいだ。
私がすぐに帰らなかったから。




私が居たら洋平さんがどうなるか分かってたのに
あんな歌い方をする洋平さんを見たら
そこから一歩も動けなかった。


帰ることが出来なかった。




洋平さん、今どんな状態なのかな・・・。
もう完全に牙が出てしまっているんだろうか？




だとしたら治せるのは私しかいない。
この中で洋平さんのことを知っているのは
私だけだし。




・・・でも、会いに行っていいの？




嫌がられるかもしれない。




私の頭にベッドから飛び降りるように出て行った
あの日の洋平さんがフラッシュバックして、
助けに行きたいと思う気持ちを鈍らせる。




それにライブを見に来た観客を、スタッフさんが
簡単にバックステージに招き入れるとも思えない。




でも牙が出てるなら絶対困ってるはず・・・。




どうしよう・・・、


せめて私の匂いが無くなるように
この場から立ち去ろうか・・・。




あれこれ悩んで、結局その場を動けずにいた。




少し時間が経って、曲だけが続く演奏に
ちらほらと不思議がる人たちが出始めた。


なかなか戻ってこない洋平さんを心配して、
会場に不穏な空気が流れ始める。




やっぱり牙が出てしまって元に戻らないの？
だからステージに出て来れないの？




このままじゃ・・・、




洋平さんに会う覚悟は出来てないけど、
きっともう迷ってる時間はあまりない。


こうしてる間にも事態はどんどん悪化してしまう。


ファンの人達がおかしいって気付く前に、
客席が騒めき始める前に。




私が行ったらなにを言われるか分からないし、
もし違う理由でステージを立ち去ったのなら
向こうから拒否されるかもしれない。




また拒絶されたら・・・、




洋平さんをまだ好きな分、
どれくらい傷つくか分からないし
そう考えるとやっぱり怖いけど、、、




それでも、洋平さんに無条件で分けられるのは
私しかいないはずだから。




そう決意を固めて、私は客席を出た。





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