LAST MINUTE

48 ページ48

*





洋平さんに私の血液を飲むことを断られてから、
あれからずっと気まずいままの状態が続いてる。




むしろあの時より空気は重くて、
同じ空間に居る事が辛く思える程、
居心地は悪い。




“ああ、向こうでも飲んだから”
“誰の血を飲んでも俺の自由でしょ”




あの時の洋平さんの言葉が
頭の中で冷たく鳴り響く。




どうして？




衝撃だった言葉にそう思っても、
洋平さんにそれ以上の問い掛けは出来なかった。




だって洋平さんにとって、
私はだだの血液の提供者。




それ以上でもそれ以下でもないから。




だから私が洋平さんに
なんで他の人の血を飲んだんですか？って
責めることも


私以外の血を飲まないでって
お願いすることも


お門違いだと思った。




今日はソイちゃんが洋平さんの脚に甘えて
擦り寄ってるのに、素っ気なくあしらって




「着替えてくる」




去っていく洋平さんの背中を
ソイちゃんが見つめてる。




「ソイちゃん、」




その頭をそっと撫でて、




「洋平さん、ちょっとご機嫌ナナメみたいね」




私の手に擦り寄ってくるソイちゃんだけど、
やっぱり本当は
ご主人様に撫でてもらいたいよねって思う。




洋平さんは地方公演から帰ってきてから
ずっとこんな調子で。


そして、ずっと私の血を飲まない。




言っても他から貰ってるから要らないと言われて


このままずっと一緒に生活していくのは苦しくて
出来れば前のように戻りたいなって思って


今の状況を解決したくて、洋平さんの後を追った。




「洋平さん」

「・・・なに？」




洋平さんは寝室にあるクローゼットの前で
着替えてる最中だった。




めちゃくちゃ低い声で返事をされて、
こんな時ばかりは
ヴァンパイアらしさが顔を出して怖くなる。




でも一緒に住んでいる以上、
これから先、ずっとこのままじゃ嫌だから




「最近、なんで私の血を飲まないんですか？」




ちゃんと理由を知りたいと思った。




「Aの血ばっか飲むわけにいかないでしょ」

「でも前は私だけだったじゃないですか」

「・・・だからそれを反省したんだよ」

「でも私の血を飲む為に一緒に住んでるんですよね？」





*

49→←47

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す