LAST MINUTE

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*yoohei side





「あ、A？仕事中だよね？」




電話口は少しザワザワとして騒がしかった。




「ちょっと心配で。今のところ大丈夫？」

『はい、大丈夫ですよ？』

「会社の奴に変な色目とか使われてない？」

『あはっ、なんですかそれ！』

「どこでどんな目に遭うか分かんないでしょ」

『それでわざわざ掛けてきてくれたんですか？』

「そりゃだって、Aは俺の大事な、、」




そこまで話して、あとの言葉に詰まった。




俺、今・・・なにを言おうとした？
大事な、なんて言おうとした？




『・・・そうですよね。大事な食料ですもんね』

「いやっ、そういうつもりじゃ、な、い、」

『美味しい血がなくなっちゃったら
困りますもんね？』




彼女はいつもより明るい声でそう答えて




違うよ、




違う、




「そうじゃない・・・」




“ 俺の大事な、、”




そのあと口走りそうになった言葉に
自分自身の気持ちに驚いて
それ以上、言葉が出てこなかった。







.







『今日も無事でした』




あれから毎日連絡はくれるけど、
素っ気なく短いメッセージばかりが届く。




なんでそんなに不機嫌なの？




俺がAのことを食料だと、
自分が食料だと思われてるって思ってるから？




もっと強く否定しておけば良かったと思うけど、
あの時は口走りそうになった言葉と
自分自身の気持ちに驚いて、




“ A自身が心配だったから ”




そんな単純で深い意味のない言葉さえ
俺の気持ちに勘付かれるんじゃないかと思うと
臆病になって何も言えなくなって。




今すぐ会いに行って誤解を解きたい。




でも、どうやって？
この気持ちをAに話すの？




そう考えるとやっぱり無理だって思って。




どう考えたって受け入れてもらえるはずがない。




彼女は普通の人間で。
俺はヴァンパイアで。




この気持ちを知られてはいけない。
気付かれたら、
きっと出て行かれてしまう。




彼女の血を失くすのはもちろん惜しい。


だけど、今はもうそれ以上に・・・。




その日のライブが終わったあと、
絶対に受け入れてもらえない想いを抱えて
解消できないこの気持ちを誤魔化そうと
俺は夜の街へ出た。





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