LAST MINUTE

41 ページ41

*





洋平さんのライブ、本当にかっこ良かった。




ライブハウスから出て体の熱が冷めても、
私の頭はまだ少しぼーっとしていた。




これはきっと中の熱気にやられただけじゃない・・・。




皆さん、すごくかっこ良かった。




磯部さんなんてベースなのに、
シェーカー振ったりボンゴを叩いたりして
すごく器用で多才だったし、


MCではそれぞれが
しっかりお客さんを笑わせたりしてて。




洋平さんが帰ってきたら、
今日見に行ったことを伝えて驚かせよう。




すごくかっこ良かったですって伝えたい。







.







洋平さんが帰ってきて、
今日のことをすぐに伝えたくて玄関まで行くと
いきなり抱き着かれた。




「えっ、洋平さっ、、？」

「・・・」

「あっ、、いっ、、た、」




そのまま首筋に吸いつかれて牙が刺さる。




「あの、洋平さん、待って、、」

「A、ライブ見に来ないで」

「え、・・・」




私がライブを見に行ったことを
知ってることにも驚いたけど、


見に来ないで、
の言葉が想像以上にショックだった。




・・・どうして？
あんなにかっこ良かったのに。


洋平さんが歌うステージを
もっとたくさん見てみたいって思ったのに。




「なんで、ダメ、なんですか？」

「ただでさえライブで気分が上がってるのに
Aの匂いがしたら、俺、余計に興奮しちゃう。
血が欲しくなるんだよ」

「・・・居るって分かったんですか？」

「分かるよ。
ヴァンパイアは鼻が利くって言ったでしょ」




そうだった。
行けば私が居るって匂いで分かるんだ。


それで血を欲する気持ちに我慢が出来なくなったら
それは確かにマズイよね。




そう思うと私の我儘だけで見に行きたいなんて
無理なことは言えなくて・・・。




もう洋平さんのステージを
生で見ることは出来ないんだ。




洋平さんがヴァンパイアで
私がお気に入りの血液である限り
これから先もずっと・・・。


もしかしたらもう二度と、
生のステージを見ることは叶わないかも・・・。




そのことに気付いたら
ショックで茫然としてしまって、


洋平さんにかっこ良かったと
今日の感動を伝えることが出来なかった。





*

42→←40

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す