LAST MINUTE

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*yoohei side





「じゃあ失礼します」

「うん、気をつけて」

「はい、ありがとうございました」




彼女が玄関を出て行った後、
窓を開けベランダから階下を見下ろすと
先程、部屋を出て行った彼女が
歩いていくのが見えた。




月明かりが彼女の歩く道を
ぼんやりと照らしている。




危ないから送るって言ったけど断られて




「送らせてもらえなかったなあ・・・」




まあね。


知らない男の家で
気を失って寝ちゃってたわけだし、


本当に迷惑を掛けて悪いと思ったのか、
それとも知らない男にやけに親切にされて
後が怖いとでも思ったのかは分からないけど。




でもね、俺は君を逃すつもりはないんだよ？







.







今日はやけにいい匂いがして、
興奮状態の人間が近くにいると思っていた。




丁度いい。
食事はしばらく振りだ。


美味しい状態の血液をいただくとするか。




人は汗をかいたり焦っていたり、
いわゆる興奮状態だと発する匂いが強くなる。


ヴァンパイアの嗅覚はとても敏感で
その匂いを嗅ぎ分ける。




そういう状態の時の血液は美味しく、
そしていい匂いと思える人間の血は
さらに美味しいから


その匂いがする方へ歩いていった。




近づくにつれて
その匂いがどんどん変わっていって。




この、匂いは、、、




これまでとは違う
酔いしれてしまいそうなほどの
格段に良い香り。




何百年と生きてきたけど
こんな匂い、今まで嗅いだことがない・・・。




ただ長く生きてるだけで大して良いこともないな
なんて思っていたけど、
案外、長生きもしてみるもんだ。




今まで出会ったことのない馨しい香りに
その血液の味を想像して思わず上唇を舐めた。





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