LAST MINUTE

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「そう言えば、初めて川上さんがヴァンパ、」

「A、」

「・・・はい？」




話の途中で名前を呼ばれて




「 “川上さん” 、じゃないでしょ？」

「あ、・・・」




かわか、・・・もとい。


洋平さんがヴァンパイアだと分かったあと
色々抵抗は試みてみたものの、
結局一緒に住むことになってしまった。




男女で住むのに苗字で呼ぶのはおかしいよねって言われて、
恋人設定でいこうという話になって。




私は別に苗字で呼んでもいいと思うし、
なんなら親戚や兄妹設定でもいいし、
むしろ全然赤の他人のルームシェアってことでも
いいんじゃないかと思ったけど




洋平さんの押しの強さと
相手がヴァンパイアという恐怖感に負け、
川上さんのことは、“洋平さん”と
下の名前で呼ぶことになった。




最初はお互い呼び捨てでって言われたんだけど
流石に知り合って間もない人、・・・というか
ヴァンパイアを呼び捨てにする勇気はなくて
“さん” 付けで妥協してもらった。




「私、初めて洋平さんがヴァンパイアって
知ったときの噛まれた記憶はあるんですけど、」

「ああ、うん」

「そのときは意識もしっかりあったし、
でもそれ以前は記憶も意識もないんですよね」




初めて曲がり角でぶつかったあの日から、
実は会うたびに吸血しちゃってたって言われて
気になっていたことを聞いてみた。




「記憶はコントロール出来るんだよね」




そしたら、そんなこと出来るんだ！？っていう
驚きの答えが返ってきて。




「吸われる前後の記憶を消せるんだよ。
覚えられてたらヤバいでしょ？」

「ああ、まあ・・・、」




この世にヴァンパイアが存在してるなんて知られたら
確かにマズイですもんね。




それで私の記憶もなかなか思い出せずに
曖昧になってたんだ。




・・・って、
納得してる場合じゃなかった。




洋平さんは自身をヴァンパイアだと言うけれど、
私の知ってる吸血鬼の知識は
ほとんど通用しなかった。




十字架も平気だし、
ニンニクも美味しく食べちゃうし、
日光にもまったく弱くない。




私の知ってる吸血鬼は
朝日で灰になったりしてたけど


洋平さんの寝起きは私より目覚めも良くて元気だし
もちろん棺桶も置いてない。




炎で焼くとか木の杭を打ち込むなんてのは
普通の人でも命を落としちゃうから
それを試すわけにはいかないし。




ヴァンパイアの弱点がまったく効かないし、
見つからなくて困っていた。





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