忘れな草の恋 27

27-26 そことソコ ページ26

■ HeeChul ■

ﾄｩｷﾞに1分間の猶予をやって先に玄関へと向かう。

本当なら、しっかりとした二人きりの時間が欲しかったはずだしなと思って気を利かせてやった。

Aは危機感がなくて無防備だが、たかが1分間で何かが起きるはずもないと高を括っていた。

しかし＿、

突然ﾄﾞｽﾝとでっかい地響きのような音が聞こえて、急いでﾘﾋﾞﾝｸﾞに戻ってみると驚きの光景が目に飛び込んで来た。

Aがﾄｩｷﾞに馬乗りになっていたのだ。

ところが俺を見つめるAは、そんなに慌ててどうしたのかと言いげな…至って普通の顔だった。

一方、顔だけ上げて暫く俺を凝視していたﾄｩｷﾞは、もうダメだと言わんばかりに首の力を抜いて頭を落とした。

だがしっかりと見えている顔は、硬く瞼を閉じて眉間にくっきりとした皺を作っていた。

今頃きっと、男ｼﾞｮﾝｽと死闘を繰り広げている最中なんだろうと思う。

二人の状況から考えて不可抗力から起きた事故だとは思うが・・・。

ﾋﾁｮﾙ「ｼﾞｮﾝｽてめーｯ！何やってんだ！！ふざけんなよっ!!!」

A「っえｯ？」

俺の怒鳴り声にはAが先にﾋﾞｸﾘと反応してしまって、その振動で連鎖反応のようにﾄｩｷﾞがﾋﾞｸｯと反応する。

ｲﾄｩｸ「ちょ…A…動かないで欲しいかも…」

ﾄｩｷﾞは泣きそうな顔で苦痛の声を上げて、ゆっくりとAの腕を掴んだ。

A「え？」

前に向き直ったAは状況を把握出来ないでいるのか、ﾋﾟﾀﾘと全ての動きを止めた。

ｲﾄｩｸ「あの…」

その声に我に返った様子のAは、ようやく自分のいる場所に気づいたのか、でかでかとした奇声を上げながら転げるようにしてﾄｩｷﾞの身体から降りた。

日本語だったせいもあり、何を言ったのかまではよく分からないが相当焦っているようだ。

その間にﾄｩｷﾞはゆっくりと膝を曲げた。

A「ごめんなさい！人様の上に乗るなんて！本当にごめんなさい！」

今はﾄｩｷﾞに土下座する勢いで謝っているが…、ずれている。そこじゃないだろう。

むしろソコに乗っていたのが原因なんだよ。

ｲﾄｩｸ「いや…いいんだ。僕の方こそごめん」

両手で顔を覆いながらくぐもった声を出すﾄｩｷﾞは耳どころか首まで真っ赤だ。

…うざい。

ﾋﾁｮﾙ「ｼﾞｼﾞｲのくせにﾁｪﾘｰみたいな気持ち悪りぃ反応してんじゃねーｯ!!!」

ｲﾄｩｸ「いっ…たぁーっ!!!何するんだよｯ!!!」

は？分かんなかったのか？蹴ったんだよ。

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