‐夢 幻‐ Part4...Satoshi Ohno

分かんない ページ12

＊


A「はい、あーん」


サトシ「あーん」


大野「……」


これは一体どういう状況なのか、誰か説明してほしい。


Aはさっきから、デザートのぶどうをずっとサトシにあーんで食べさせているのだ。


いくら幼い少年とはいえ、Aも気付いても良さそうなのに――


サトシ「おじさんも食べればいいのに」


サトシのあからさまなドヤ顔に、俺のなんとも言えない怒りはさらに増した。


あいつは本当に７歳なんだろうか。


大野「……お、俺もAに剥いてもらえないと食べない」


A「えっ、ええっ!?」


大野「サトシには剥いてあげてるのに、俺には剥いてくれないの？」


A「へ、変なこと言わないでよ。智とサトシくんじゃ、全然違うじゃない」


大野「はは、そうだよな。何か、変なこと言ってごめん」


サトシ「Aお姉ちゃん、もっと食べたい」


A「はいはい、ちょっと待ってね」


大野「でも、Aも大変だろ？ そんなにたくさん剥いてばっかで。俺が剥こうか」


A「いいよ。あたし一人でできるから」


大野「Aに迷惑かけるなって、言っただろ」


A「迷惑なんかじゃないよ？ あたしが好きで剥いてるだけ……サトシくんにひどいこと言わないで」


大野「なっ、なんだよ、そんなにそっちのサトシがいいのかよ、じゃあ、俺だって知らねぇよ！」


意地の悪いことをつらつら並べて、俺は自分の部屋に閉じこもった。これじゃ、サトシ以上の子供だな。


分かんないんだよ。Aの気持ちが、何で避けられてるのか。


やっぱり昨日のせい？ Aは嫌だったの？ もしかして、恐がらせた――？


大野「分かんねー……」


もう俺はどうしたらいいのか、分かんねぇよ。

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