‐夢 幻‐ Part4...Satoshi Ohno

キスシーン ページ1

＊


A「今日は智のドラマの記念すべき第１話放送日なんだから！」


大野「あぁ……そうだっけ」


A「そうだよ！ もう、自分の主演のドラマの放送日をなんで覚えてないかなぁ」


大野「いや、えーっと、」


俺がこんなぎこちない返答をしてしまうのには、訳がある。


実はこのドラマは、第１話からキスシーンがあるという、教師物のくせに衝撃的な内容なのだ。


できればAが、ドラマのことを忘れてくれてればいいと思ったが、最近はあちらこちらで宣伝してるしそんな訳がない。


陽気なＣＭが、困り果てた俺を嘲笑うかのようにずっと流れていた。


大野「……あの、さ」


A「ん？」


大野「実はさ、これって第１話からさ、」


A「うん」


大野「キスシーンがあるんだよね」


Aは何も言わなかった。


明るく光る電球の下で、ひたすら重苦しい沈黙が流れる。


やがて数十秒して、Aは落ち着いたのか少し顔を上げると、いつものように無邪気に笑った。


A「あぁ、そう」


大野「こ、恐いよAっ！ 顔と言動が一致してないよ！」


A「別に怒ってなんかないもん」


大野「間違いなく怒ってるよ！」


A「これって教師と生徒の物語なんでしょ？」


大野「いや、そういう真面目な内容のはずなんだけど、隣のクラスの担任が美人教師で、」


A「それだけで簡単にキスしちゃうわけ？ どういう教師よっ！」


大野「内容の文句は監督に言って！(笑)」


A「……もう知らない」


大野「まぁまぁ、そう怒んないでよ」


A「怒ってないってば」


大野「ったく、つれないなぁ……」


俺は可愛く体操座りしたAの機嫌を伺いながら、後ろに回った。


そっと抱きしめると、黙ってその肩に顔を埋める。

ずるい(あなたside)→

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