巡り合い.3 ページ17
怪盗は迷いなく道を進む。
「どうして食堂への道がわかるんだ!?」
友人が怪盗に問う。
怪盗は後ろを振り向き、笑顔を浮かべた。
『怪盗は何でもお見通しだから。』
怪盗は友人ではなく、拓海に向かって言い放った。
『じゃあ今から焼きそばパン、奪ってくるね。』
くるりとターンして怪盗は食堂に溢れかえっている人混みに紛れ込む。
異質な格好をしているにも関わらず、その怪盗に誰も気に留めない。
ワクワクしている友達を何とも言えない表情で見ていた拓海はふと視線を感じて振り返る。
「あ、やっぱり拓海だった!」
拓海の視線の先には手を振っている和実ゆい。
友人が拓海の視線を追いかけて和実ゆいを視界に入れた。
「ゆいちゃんじゃねーか!!
おい、拓海早く彼女のところへ行ってあげな!」
「いや、ゆいの隣に友達がいるだろ」
焼きそばパンを待ち望んでいた友人の声に気づいたのか、ゆいの隣にいた青髪の物静かな少女と茶髪の元気な少女はペコリと会釈をした。
拓海はゆいの隣にいた少女達に会釈を返し、ゆいに向かって手を振った。
「おお〜いいね、熱いねぇ〜」
友人はその行動を見て口笛を吹いて拓海をからかう。
拓海は顔を赤くして友達をキッと睨む。
『焼きそばパン以外に目移りしないでくれる?』
後ろから突然声がかかる。
拓海と友人は目を見開き、ゆっくりと振り返った。
怪盗が焼きそばパンをつまんで後ろに立っていた。
拓海の目には恐怖がありありと浮かんでいたが、友人は目を輝かせていた。
「焼きそばパンじゃん!まじでありがと!!」
友人はキラキラと輝く笑顔で怪盗から焼きそばパンを受け取る。
拓海は怪盗の反対の手に持っていた弁当箱のような物を一瞬見た。
『じゃあ私はこれで。焼きそばパンの味が変でも文句言わないでね。
私はただ言われた通りに奪っただけだから。』
怪盗はそう台詞を吐き、颯爽と去っていく。
拓海は怪盗が言い残した言葉に違和感を覚えたが、元から変なヤツだったしな、と割り切った。
「じゃ、早速いっただきま〜す!」
友人が幸せそうな顔で焼きそばパンにかぶりついた。
いつもなら友人得意の食レポが響き渡るが、友人は口を抑えて蹲ってしまう。
「ど、どうした!?大丈夫か!?」
拓海が駆け寄って友人に声をかける。
「あ、味が…しない…」
友人は浅く息を吐きながら消えるような声で呟いた。
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Lynn - ラピスさん» おぉ、フィナーレ戦まで行きましたね。この調子でブンドル団である夢主(自分)をさらに強めにして下さい。後、この小説も作者さんの事も大好きです。 (12月18日 16時) (レス) id: b7c4ae609e (このIDを非表示/違反報告)
Lynn - ラピスさん» では、無理ない程度新しくストーリー更新お願いします。このシリーズハマりましたよ!もう設定も、そのまま固定で大丈夫です。 (9月19日 9時) (レス) id: b7c4ae609e (このIDを非表示/違反報告)
Lynn - ラピスさん» なら、そのままで大丈夫です。CV追加まで頼んだ自分が申し訳なかったです。 (9月10日 9時) (レス) id: b7c4ae609e (このIDを非表示/違反報告)
ラピス(プロフ) - Lynnさん» すみません、自分声優には詳しくなくて…CVは決めれないんです。申し訳ありません…。 (9月9日 22時) (レス) id: 5ef9e0ac96 (このIDを非表示/違反報告)
Lynn - ラピスさん» いえいえ、見てる自分も嬉しい限りなんでね。あ…プロフィールのとこに、CVつけて下さい。CV決まったら載せるのをお願いします。 (9月9日 14時) (レス) id: b7c4ae609e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラピス | 作成日時:2023年4月2日 17時