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side Daiki

【 FUTURE 】




『週末、良かったらご飯行かない?』



仕事が終わってすぐに見たスマホに届いたメッセージ。
名前は『知念侑李』と表示された。



幼い頃からの不思議な体質を解明できればと研究に協力して少し経った頃。
研究もデータが揃ったようで、一区切りがついた。
それでも経過観察は定期的に行わないといけないため、研究所を訪れる。



『もちろん!週末ならすぐに帰れると思うから、研究所に行こうか?』



今、先生こと知念は新しい研究を始めている。
新しいとは言っても、元々研究していたことの延長だって言っていたけれど。
それでもテレビのニュースを賑わせるほどの大発見をしたのだ。
きっと多忙に違いないけれど、今でもこうして俺に気を配ってくれている。



ありがたい反面、無理をさせてしまっているのではないか。
そう思うとこれが本当に正しい答えだったのか。
いつも他人が悲しい思いをしているのを知っている。
けれどそれを助けようとすると裏目に出る。



そんな弱い自分に言葉を掛けてくれたのが彼だった。
俺は、何か彼の力になれないのだろうか。





























「以上で」



きっぱりと注文を終えて、知念はメニューを折りたたむ。
店員が注文の確認を取り、間違いないと返事をした。



「ごめんね、事前に何が食べたいか聞いておけば良かったんだけど」

「そんなの気にしなくても。それより、研究忙しいのに良いの?」

「当たり前でしょ、僕の研究はあくまでお仕事なの。仕事ばっかじゃ気が滅入るからね」



なるほどね、と言って水を一口含んだ。
こうして二人で食事をするのも、珍しいことじゃない。
きっと彼なりの気遣いなのだと分かっているけれど。
俺は大丈夫だから、そんな気遣いしなくていいよがどうしても言えなかった。



「でも今度は大貴の好みを教えてよ。それか、お勧めの店」



えぇ……と下手な誤魔化しを入れながら辺りを見渡す。
窓際の席は、夜景が良く見える。
何せホテルのレストランなのだから、息が詰まりそうになる。
あまりこういうお店に来たことがないから、よく分からない。



「俺のお勧めって言われても……うーん」



食に極端なこだわりが無い分、何でも美味しく頂けてしまう。
知念の舌に合いそうなものと考えるが、何も出てこない。
第一、ここに入る前に自然と背筋が伸びていた俺に、知念は緊張しなくて大丈夫だよと笑っていた。

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作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年6月26日 23時

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