包帯無駄遣い装置、胸キュン研究記録

研究5 身長差に関する有利 ページ9

何故顎クイをするのか？ それは女の子と視線を合わせて自分の思いの丈を伝える為だ。そして女の子がそれに首肯したらあわよくば唇への接吻をする為。

　その他にも、壁ドンの床バージョン、平たく云えば女の子を押し倒す形になる「床ドン」。後ろから女の子に抱きつく「バックハグ」、からの顔が見えない事を利用して普段云えない事を云うなどがある。

　「そして……！ 私に朗報だよ！」

　何と、二人の身長差は「あればある程良い」らしいのだ。この一文を読んだ時は思わず叫んじゃったよ。だってさ？ 彼女は目算で160cm弱、私は181cm。その身長差、約20cm。十分過ぎる程十分だ。今程身長が高くて良かった、と思ったのは、中也絡みの件以来だ。

　＊

　取り敢えずその方針を紙に書き出してみた。紙には「ギャップ 重要！」「床ドンはリスキー？」などのぶつ切りにされたワードが落ちている。
　側から見たら全く判らない図だが、周りに転がる本を読み尽くした私だけ判る構図だ。

　「……後はAちゃんに実行するだけ、か」

　それが一番難しいのだ。兎に角彼女に嫌われるのが恐い。彼女は、失いたくないと思ったひとだから。彼女がナオミちゃんに宛てて送った電子文章(メール)の文面の単語を思い返す。

　『長島蓮君

　見た目がド好み 声がイケボ 落ちた 死んだ 幸せになってほしい ツンデレのギャップが素晴らしい ノックアウトオーバーキル 可愛い 運命か？ すごくクる

　From A』

　思い返しても不安になるその電子文章。然しそれには続きがあった。

　『私、太宰さんの事が気になってるかも知れない。でも向こうは私の事なんて興味ないだろうし…それで二次元に走ってる、っていうのもあるかも。
　ああ、でも行動とかで云ったら矢っ張り二次元なのかな？ だから昼はああいう事云ったんだけど。
太宰さんに二次元っぽい胸キュンシーンを現実で遣られたら、私まじで惚れるかも』

　「興味ないどころじゃないよ……君にベタ惚れかも」

　あれを見る限り、後一押しな気がする。その彼女の心の天秤を此方側に傾けるのは他ならぬ私だ。私の勇気だ。ナオミちゃんと与謝野先生も手伝ってくれたし、私も頑張らなくてはならない。
　私は並々ならぬ決意を持って、探偵社に向かった。

　因みに今は昼の十二時。お察しの通り、私は今迄仕事をさぼっていた訳だけど、まあきっと巧く云いくるめておいた国木田君が仕事をばりばり片付けてくれている頃だろう。

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ラッキーアイテム

砂色の外套

ラッキーなシチュエーション

森さんが壁にかっこよく手を突いた

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