考察 ページ16
私は既にAちゃんに一番手酷く振られるパターンを想定して、実際に訪れる
「あの……」
「何だい、振るなら早くしてくれ給え」
自分の声が凍りついていることを自覚して、不覚にも視界が静かに揺らいだ。彼女の声だけが、ただただ私への宣告の如く下る。
──もう。もう、如何にでもなってしまえ。
「太宰さん狙ってますか。『バックハグからの耳元囁き』。私、このシチュエーション」
いつか、好きなひとにしてもらいたかったんです。
そっと頰を撫ぜるようにして発された声。彼女の背中の体温のあたたかさが感覚として戻ってくる。
「え、好きなひとっていうのはつまり」
「そう、太宰さん、あなたは私のソウルメイトなのです! ……ふふっ、厨二で誤魔化します」
「ソウル、メイト。──
私はAちゃんをつよくつよく抱きしめた。それでも足りなくて、ぎゅうぎゅうと彼女を両腕で締めあげた。
「口当たりの良い言葉で誤魔化さないで? 君の気持ちをはっきり言葉にして伝えてくれ給えよ」
「太宰さん、痛い……それは、むり、かもしれないです」
「如何してだい?」
「訊かなくても解りますよ。太宰さんなら」
「そうだね。好きだからこそ胸が苦しくて伝えられないのだろう?」
彼女は頭をわずかに落とした。髪が重力に従ってゆっくりと床に落ちた。それからぽつりとひとことこぼす。
「……きっと、私のことなんて太宰さんはお見通しだし、その上でそんな気持ちになることが理解できないんだ、って思ってると思うんですけど」
「そんなことないよ。だって私がそんな気持ちになってたもの。つい今しがたまで」
「……太宰さん。私、きっと一回しか云えないけど、ちゃんと聴いててくださいね」───私、太宰さんが大好きです。
そうAちゃんに云われたときの感情を何に喩えたら伝えられるのか。私はそんなにも幸福な語彙を持っていなかったんだ。だから、巧く伝えられなくても赦してくれ給え。
「Aちゃん、世界一好きだよ。これからも、ずっと」
その言葉に振り向いた彼女の瞳に、私は自分の願いが叶ったことを知る。
恋を叶えるのに、胸キュンなんて必要なかった。真摯なこころと言葉があれば、それでいいんだね?
これが私の、胸キュン研究記録の考察さ。
ラッキーアイテム
砂色の外套
ラッキーなシチュエーション
森さんが壁にかっこよく手を突いた
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かなで(プロフ) - 待って。太宰さんかっこよくすぎる。え、待って夢主ちゃんと共感できる部分がありすぎる。頷きすぎて首痛い。差し出がましいのは承知の上なのですが、続きを読んでみたいです。いやでも今のまま完結でも素敵すぎるので気が向いたらでいいので!お疲れ様です(?) (2019年3月26日 2時) (レス) id: 5c0695dae3 (このIDを非表示/違反報告)
桜来(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後まできゅんきゅんしました心臓潰れそう....!しかも宣伝までしていただいて.....!!本っっっ当にありがとうございました!シリーズ化されるんなら飛んで見に行きます!!それでは改めて、素敵な作品を本当にありがとうございました! (2018年6月30日 22時) (レス) id: 796169ce21 (このIDを非表示/違反報告)
嘘の鏡(プロフ) - 桜来さん» 桜来さんのコメに鼻血が出そうです(真顔)何かもう様つけるのが避けられないパターンになってきてますね(笑) (2018年4月10日 20時) (レス) id: b75bbcdd77 (このIDを非表示/違反報告)
嘘の鏡(プロフ) - ふでごんさん» えっ…ふでごんさんの作品見たことあります!!(真顔)夢主ほぼ友人のキャラなんですよ(笑) (2018年4月10日 20時) (レス) id: b75bbcdd77 (このIDを非表示/違反報告)
嘘の鏡(プロフ) - さくらさん» ですよねだざぁさま尊い!!もう大好きなんです!コメ、ありがとうございます! (2018年4月10日 20時) (レス) id: b75bbcdd77 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2018年4月7日 23時