包帯無駄遣い装置、胸キュン研究記録

技能 事実を多角的・多面的に捉える ページ13

私は俗に云う「オタク」だ。
　小学生で携帯小説を読み漁り、……ううん、恥ずかしいから詳しくは云えないんだけど……そこで「そういう世界」を完全に知った。
　それらの携帯小説が当時の私よりずっと上の──中高生に好まれていることを知ったのは、もちろんそれからずっと先の話。
　中学生ではライトノベルに手を出し、それらが原作になったアニメを数多く観た。その連鎖で、アニメもよく観るようになった。アニメを見るなんて低学年の子がやることだと思っていた。けれどそれは、とんでもない偏見だった。アニメとラノベは私の心を、たしかに深く耕してくれた。
　私の青春は、アニメと共にあった。

　初恋が、アニメの中の男の子だと言ったらきっとみんなは気持ち悪がるだろう。

　だけど私の初恋の相手は確かに画面の上で展開される人物だった。
　彼の笑顔は30分1話のアニメの中で光って見えた。苦しむときも、怒りの感情も、凡てを彼と共有して。なんだかとても胸が苦しくなって、泣きそうになって、気がついたらラバーストラップや缶バッジを買い漁っていた。

　そんなことをある日、私はぽろっと学校の友人に云ってしまった。
　次の日から私は、女子のグループに一切入れなくなった。女子がのけ者にすれば、当然男子も私を見えないものとして扱う。
　昨日までおんなじ話題を共有して、お腹が痛くなるまで笑っていた彼女たちとの日々がひどく輝かしいものに思えた。

　ほんとうに大切なものは、失わないと気づかないものなんだよ。

　最近観終わった、アニメの中である子が云っていた言葉の意味が、やっと解った気がした。
　解らなくてよかった。そんなこと、一生。
　昨日まで私に笑みを向けてくれていた、あの子たちをうしなうような代償を払わなければならないのだったら。

　それからずっと、私は自分がオタクであるということを隠し続けてきた。この世界にいるであろう私の同志(オタク)を探す気力も、あの学校での出来事が邪魔をして、勇気が持てないでいた。

　そんな日だった。私が、川を流れることが趣味だというアニメよりも奇っ怪な人物に出逢ったのは。

　彼は本当に川を流れていて、本当に救出されるのを嫌がった。なんてキャラの濃いひとなんだろう。私の太宰さんに対する第一印象はそんなものだった。

　だが、男性にはおよそ不釣り合いなほど端正な顔の唇を尖らせた太宰さんを見て、私はとんでもない衝撃を受けた。

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ラッキーアイテム

砂色の外套

ラッキーなシチュエーション

森さんが壁にかっこよく手を突いた

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