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「そっちの方が似合ってるよ。琉生には。」
撮影スタジオの廊下で鉢合わせた後輩はしばらく見いひんうちに疲れ果てて完全にキャパオーバーって感じ。
自分じゃ気づいてへんかもしれんけどメイク落としてるからか隈も顔色悪いのもはっきり分かる。
「神ちゃーん、琉生！席空いてるって。」
「お、やったやん。琉生、行こ。」
「おれ、っ…やっぱかえります、……ふたりにも迷惑かけてすみません。」
「待て待て。そんなあっさり帰すわけにはいかんぞ。」
「せやで。こんなボロボロ泣いてる子を1人には出来ひんし。それに…ほら、お前の兄ちゃんたちにも頼まれてるしな。」
迷惑やから、そう言って立ち上がろうとする彼の手をおもわず掴んで引き止めた。
「ぇ…？」
「琉生になんかあったらよろしくお願いします。やって。」
「なんで、こんなの。」
「相も変わらず過保護やわあいつらも。丁度琉生が東京来てすぐくらいにメンバー全員にこのメール来てん。きっとなにわとかエイト兄さんとか色んな人に送ってると思うで。まさかこんなとこで会うと思ってへんかったけど。」
きっと昔から頼り方が分からへんぶきっちょな末っ子が心配でたまらへんあいつらなりの手回し。
その事を知って目を見開いてる琉生の背中を押して歩き出した。
きっちり、その理由教えてもらうから。
＊
「おれ、なさけないですね。」
「何が？」
「こんな歳にもなって寂しいとか。ずっと一緒にいれるわけじゃないのにかってに落ち込んで、泣いて。ほんまにかっこわるい…」
そう言うと同時にまた小さい雫がポロリとこぼれ落ちて。
「ええやん寂しくなっても。」
「でも、っ…」
「皆に迷惑かけたくなかったんよな？仕事忙しいの、ちゃんと分かってたから1人で寂しいの全部堪えてたんよね。」
「う、んっ……」
「1人でよぉ頑張った。大丈夫、寂しくなってもええんよ。琉生が大きくなったからってメンバーに甘えることも寂しいって言葉に出すことも無理に辞めへんくていいよ。」
「そうそう。そんな急に大人になったら俺らが寂しくなるわ、な？神ちゃん。」
「おん。琉生はもうちょい自分の気持ちに正直になりや。自分を押し殺してまで生活する必要なんてないから。」
「…で、琉生は。今どうしたい？」
「みんなと、はなしたい、会いたい」
「ちゃんと言えるやん。」
『らしいでー？大晴、正門。』
琉生の言葉を聞いてスマホの画面をスピーカーに切り替えた。
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作者名：i | 作成日時：2023年6月19日 19時
