あいたい ページ7
「じゃあ気ぃつけてや。ちゃんと毎日ご飯食べて寝ること。分かった？」
「なんでリチャくんそんなおかんみたいなん笑」
「困ったらいつでも連絡していいから。」
新幹線乗り場ででっかいキャリー持って話してる俺とさくら。
数ヶ月前、さくらの主演舞台が決まってありがたいことに大きい仕事やから稽古とか東京での上演とかも含めて１ヶ月ちょいの一人暮らし。
さすがに時間が合わんくて全員は来れへんかったから俺が代表で見送りに、大晴とかめっちゃ行きたがってたけどな。
「俺らも大阪公演見に行く。楽しみにしてんで。」
「うん。ありがと、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
さくらの姿が車内に消えるのとほぼ同時に新幹線の扉が閉まる。
もちろんこうやって仕事でメンバーがバラバラになることは珍しくないけどこんなに長いこと会えへんことは今まで無かったからなんやかんや心配かもって。
まぁ、いざとなったら東京にも関西メンバーはおるし様子見てもらうのもいいかなって走り出す新幹線を見て思った。
「頑張れよ。」
＊
「ただいまぁ…」
ドアを開けて真っ暗な玄関で立ち止まる。
「…つかれた。」
東京に来てから1週間とちょっと。
稽古自体は厳しい時もあるけど楽しい方が大きいし見に来てくれる皆のためにも手は抜けへん。
それ以外の仕事ももちろん同じ。
別に誰かに何かを言われたとかやられたとかじゃないけど一人ぼっちの家に帰ると無性に疲れて動けへんくて。
ご飯も掃除もやらんとあかんことはいっぱいあるのに明日でいっかなんて投げやりになる。
「誰かあいてへんかな。」
電話したいなぁなんてスケジュールアプリを開くけど今日も今日とて大量に詰まってる仕事を見て諦めた。
俺だけが忙しいわけじゃない、皆忙しいし大変やからこんなとこでわがまま言うとる場合ちゃうねん。
会いに来てくれるメンバーにがっかりされたくないから。
「風呂、入ろ。」
＊
「おかしいな…」
「何？」
「いや、さくと電話する約束してるはずやねんけど出えへんねん。」
「稽古長引いてるとか？」
「そうなんやろか…それやったらええけど。」
不安そうな顔をする大晴を横目に荷物をまとめる。
「せや。今度さ、東京でロケあるやん。そん時会えるんちゃう？」
「あー。時間合ったら会えるかも。連絡しとくわ。」
「ありがと。んじゃ、るーちゃんと連絡ついたらまたどんな感じか教えて。」
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作者名：i | 作成日時：2023年6月19日 19時
