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「いつもだったらリュウに頼むのだけれど、アイツはいまチビ達を起こしに行ってるから。頼んだわよ」

 そう言いつつ、彼は野菜の汁でべたつく手を一度洗った。ぽたりぽたりと水がしたたり落ちるその指先は、赤く痛々しい。
『水仕事なんていやよ、手が荒れちゃうもの』
 いかにも言いそうなそんなセリフを、ニーヤは決して言わない。なぜなら、彼の心は「愛」であふれているのだから――なんてこと、決して彼は認めないだろうが。仲間の頼もしさに、思わずユアンの口角は上がりかけたが、見とがめられては事だ、と慌てて口を引き結んだ。
代わりにユアンが思い出すのは、先ほど名前が出た男のこと。
 リュウ、それは保護している者たちの一人で、獅子のベアマンだ。ユアンが初めて彼と出会ったときは小さく繊細な少年だったが、今となっては立派な青年だ。将来は組織の一員として活躍するつもりらしく、もともと釣っている目をもっと怒らせて剣を振っている姿を時折見かける。獅子らしくその姿は威風堂々、という感じだ。性格は冷静ながらどこか人間臭い。そんなところが子供に人気らしく、子供たちの束ね役、と一応なっているらしい。
 そんな彼は常にポーカーフェイス。ゆえにユアンの中ではこき使われるようなイメージはなかったが、さすがにニーヤの前ではそれも形無しらしい。あくせくと動きまわるリュウを想像するとおかしくなって、やはり少しだけ口元が緩む。

「笑うなんて、何かおかしいことでもあった? ほら、早くしないと子供たちが起きだしちゃうわよ。まとわりつかれて動けなくなっても知らないからね」

 思えば、子どもたちに人気なのはユアンも同じであった。会う機会が少ない、という点も考慮するならユアンのほうが人気かもしれない。

「……そうだな」

 子供たちは苦手ではないが、うっかり爪で傷つけてしまっては怖い。それに、彼らの中には自分のパワーを考慮せずに突進してくるものもいる。
 すれ違うことのないように、と慌ててユアンは部屋を出た。

片耳うさぎ→←*



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紫清(プロフ) - 嵩画さん» 温かいお言葉ありがとうございます! 読んで下さる方がいるということが何よりの励みになりますので、今後ともよろしくお願い致します。 (2020年3月16日 18時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
嵩画(プロフ) - 毎回更新される度にわくわくしながら読ませて頂いております…今後の展開が非常に楽しみです。お忙しい時期だとは思いますが、頑張って下さい。 (2020年3月16日 17時) (レス) id: 34e937d538 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - ももせさん» ありがとうございます! 長くなりそうですが、お付き合い頂ければ幸いです。 (2019年9月26日 0時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
ももせ - 小説版すごく楽しみにしていました!今後の展開が気になる…更新楽しみにしてます!! (2019年9月23日 23時) (レス) id: a031215c05 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫清 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年9月23日 23時

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