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そう背後から飛んできた馴染みのある声に、急に脱力した。
振り返ると、赤毛の従騎士――ネロがこちらへ走ってきていた。伝令にしても援軍かは分からないが。遅すぎる、と少しだけまた苛立つ。
しかし、私は何を、とそこで彼女は気づいた。掲げていた剣を下ろし、慌てて善良な、職務に忠実な騎士の仮面を被りなおす。時すでに遅し、かもしれないが。同僚の前でそうするのは、もはや癖のようなものだった。
「……リエースさん、そちらはどうですか。こちらは、不審者を一人仕留めるところですが」
「いや、無理して笑顔つくんなくていーよ。怪我ひどそうだし……。それより、とどめはちょっとまずくないか。相手、畜生じゃないっぽいし」
しかし、と言おうとしたがエミリアはそこで口をつぐんだ。冷静になれば、殺すべき理由の方が少ない。らしくない、と頬を軽く叩くと、また口の中に血の味が広がった。
「だいぶ疲れてるっぽいな、シュヴァルツ。肩でも貸そうか？」
「いや、いい。それより、奴を確保してくれ」
オーケー、とネロは軽く返事をした。そのままエミリアから背を向け、シトの方へ歩いていく。ありがとうございます、と答える彼女の心中は、痛みと、疲労と――「従騎士エミリア・シュヴァルツ」らしくない姿を見られたという焦燥でいっぱいだった。加えて、先ほどのシトの言葉が頭の中でぐるぐると回る。
忠誠のふりをした私怨。責任感を持って挑んだことがない。
だから、普段考えないようにしているのに――本当の正義とは何か、など。そんな考えなど絞りだしてやろうと、髪ごと頭皮を掴んでみるが、別に何も出て来やしない。
さて、ネロの方はというと、シトの下で――手錠を取り出すのに手間取っているのか？ そうエミリアが考えるような時間を与えるくらい、のろのろと何かやっていた。見てみようとするが、背中を向けられている以上はよく分からない。
「ところでシュヴァルツ。俺――『あなたになら、これまで誰にも打ち明けられなかったことを何もかもお話しできそうです。どうか私のために大きな心の支えと慰めになってくださいね』」
急に、何を――。そう怪訝に感じたが、エミリアはすぐに思い直した。
そうだ、私とリエースは互いに唯一の友だった。先ほどまで、私は何を隠し立てようとしていたのだったか。どうせここには彼と、もう意識を失ったであろう犯罪者しかいないのだ。
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紫清(プロフ) - 嵩画さん» 温かいお言葉ありがとうございます！ 読んで下さる方がいるということが何よりの励みになりますので、今後ともよろしくお願い致します。 (2020年3月16日 18時) (
レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
嵩画(プロフ) - 毎回更新される度にわくわくしながら読ませて頂いております…今後の展開が非常に楽しみです。お忙しい時期だとは思いますが、頑張って下さい。 (2020年3月16日 17時) (レス) id: 34e937d538 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - ももせさん» ありがとうございます！ 長くなりそうですが、お付き合い頂ければ幸いです。 (2019年9月26日 0時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
ももせ - 小説版すごく楽しみにしていました！今後の展開が気になる…更新楽しみにしてます！！ (2019年9月23日 23時) (レス) id: a031215c05 (このIDを非表示/違反報告)
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