従騎士 ページ23
「――というのが今回提案する作戦だ。何か質問のある者は?」
詰所の中の会議室の一つ。貴族の私邸の警固任務における参謀に選ばれたゲレオンは、ひとまずすべて言い終えた後に、机についている作戦参加メンバーを見回した。
まずは、黒板に作戦内容を一通りまとめているエミリア・シュヴァルツ。速記しながらも器用に内容を整理していたようで、理解の具合に問題はなさそうだ。ちょうど書き終えたようで、群青の目を閉じ、ふう、と一息ついた。次に、ゲレオンの隣に座るネロ・リエース。くるくるとペン回しをしているが、要領がいいと評判の彼ならちゃんと聞いていたに違いない。
そして、その向かいに座るリュカ・キャンデロロ。ぼんやりと外を眺めている。髪と同じ色の、真っ白で長い睫毛が薄桃の瞳に影を落とす。一枚の絵画になりそうないで立ちであった。――ここが会議室でなければ。ただ、彼らは一応同階級の知った仲。いつも通りだ、とそこそこに、次々と視線をやる。
最後にアズサ。十六歳も年上、そしてあまり目つきの良くない彼の視線が飛んできたものだから、制服の下でひそかに彼女の筋肉は硬直した。ここまで大きな任務を任されるのは初めてのはずだ。それでどうやら――少しだけ、緊張しているらしい。ゲレオンはそう、適当にその様子を解釈した。
それも仕方ないか、とゲレオンは書類に目を落とす。ほう、と彼女が安堵のため息をついたのをもちろん彼は知らない。
アズサは、彼の記憶が正しければ、大型任務で次々と功績を上げ、一瞬で昇進をした者だ。だからこんな小さな――そして、後ろ暗い任務に携わった経験は少ないに違いない。淡々と、ゲレオンの思考は進む。
いや。もしかしたら「後ろ暗い」ということにすら気づいていないのかもしれない、と彼は先ほどの、アズサの任務の概要説明を思い出す。畜生勾留施設の何が何かで、反政府組織と思われるものの動きがどうとか。まあ、騎士団らしい仕事と言えばそうかもしれないような、でもどこか煙に巻かれているような説明。まったく参謀長臭い文章だ、と頭の中に浮かんだ上司の顔にさえ苛立ち、彼の眉間にしわが寄る。彼は、直属の上司とはいえ参謀長が大嫌いなのである。
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紫清(プロフ) - 嵩画さん» 温かいお言葉ありがとうございます! 読んで下さる方がいるということが何よりの励みになりますので、今後ともよろしくお願い致します。 (2020年3月16日 18時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
嵩画(プロフ) - 毎回更新される度にわくわくしながら読ませて頂いております…今後の展開が非常に楽しみです。お忙しい時期だとは思いますが、頑張って下さい。 (2020年3月16日 17時) (レス) id: 34e937d538 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - ももせさん» ありがとうございます! 長くなりそうですが、お付き合い頂ければ幸いです。 (2019年9月26日 0時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
ももせ - 小説版すごく楽しみにしていました!今後の展開が気になる…更新楽しみにしてます!! (2019年9月23日 23時) (レス) id: a031215c05 (このIDを非表示/違反報告)
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