Episode 3−36 ページ36
＿＿俺、元人間なんすよ。
しかも、一度は逝った身です。戦争に巻き込まれて、致命傷を負ってそのまま。
でも、どういうわけか生きてる。なんでだと思います？
そう薄く笑みを浮かべて語る彼に、私は瞠目した。
『元、人間』
「人間から悪魔堕ちするのは珍しい話じゃない。魔力が汚染しきるほどの感情が膨れ上がれば、誰だって悪魔になれる」
『そうなの？ 私でも？』
「うん。まぁそんなんめったにないんやけどね」
無知な私に向けて説明を付け加えてくれたしんぺい神は、でも、と口にすると、ショッピをまっすぐ見据えた。
「＿＿でも、一度死んでしまえば不可能だよ。悪魔だってしっかり魂がある。それが潰えた身では、どう足掻いたって天国に昇るしかない」
「そうっすね」
『え、じゃあなんで...』
彼は、今、ここに存在している。死んでいない。心臓が動いているのだって確認できた。
深まる一方である謎に首を傾げると、ショッピは私に視線を向けた。
紫の瞳が妙に輝いていて、吸い込まれそうになる。
「俺の悪魔としての力は、頂いたものなんです」
「誰から？」
「憂鬱の悪魔」
憂鬱の悪魔。脳裏で言葉を繰り返す。
図書館で見た。確か、
(憂鬱の悪魔＿＿今や存在しない悪魔。憂鬱を感じると、時間を戻し、幸せなひと時をやり直す惰性の悪魔。)
だったか。
七つの悪魔という書になぜか組み込まれていた八人目。
謎が謎を呼び謎すぎる謎に、私はさらに首を傾げた。
『憂鬱の悪魔にもらった力？ 悪魔の力をもらうだなんて、可能なことなの？』
「さぁ。目が覚めたときには、すでに憂鬱の力を感じました。何でこれが憂鬱の力だって直感できたのか、そもそも憂鬱さんはどんな方法を使ったかは俺にも分かりません」
『その憂鬱さん、今は？』
「おそらく死んでるでしょう。魔力、魂、共に憂鬱さん自身に補強されてる気配を常に感じとるから」
「自分の命と引き換えに君を生きながらえさせたってわけか...」
はいと頷くショッピは、どこか覇気が足りない。
元々あまりやる気のない雰囲気だけど、今のはなんだか寂しそうな、悲しそうな声音が僅かに混ざっていた。
そして、ここまでの話で、いくら鈍感無知な私でも察しがついている。
『...憂鬱さんの名前は？』
静かに問う。
ショッピは私の様子を横目で伺ってから、視線を外し、小さな声で呟いた。
「＿＿A」
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miyaana(プロフ) - 初めまして、今日この作品を発見して一気読みしてしまいました！面白すぎます...。続編も楽しみに待ってます！頑張ってください (12月11日 20時) (
レス) @page40 id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
ランス(プロフ) - 砂糖里さん» ワクワクしてくれるなんて嬉しすぎます...！！これからも少しずつ更新していくので、どうぞよろしくお願いします...！ (9月4日 23時) (レス) id: 2ab0d8c443 (このIDを非表示/違反報告)
ランス(プロフ) - 裂けないパ◯コさん» あんばばばっ....嬉しいお言葉....頑張ります頑張ります...これからもこの作品をよろしくお願いします！！！ (9月4日 23時) (レス) id: 2ab0d8c443 (このIDを非表示/違反報告)
ランス(プロフ) - 碧さん» 返信遅くなり申し訳ないです...！！待ってくれている人がいてくれるだけで嬉しいッ、、これからも頑張ります...！ (9月4日 23時) (レス) id: 2ab0d8c443 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖里(プロフ) - 更新お待ちしておりました…！とってもワクワクする展開で続きが気になってしまいます！作者様のペースで頑張って下さい(*´꒳`*) (8月22日 7時) (レス) id: bc73dba8c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ランス | 作成日時：2022年2月10日 20時
