Episode 3-29 ページ29
背筋に悪寒が走った。
ただ冷たいだけの冷気ではない。体内を直接つんざくような冷気、呼吸をすることすら憚れるような空気に、本能が警鐘を鳴らした。
『トントン...』
「察知できてるなら大丈夫や。奴さん、そろそろ本気出すみたいやな」
私を庇うように前に立つトントン。
彼の熱気で痛いほどの冷気が少しだけ緩和されて、小さく息を零す。
「＿＿憤怒の悪魔。腕は鈍ってないみたいっすね。良かったっす」
「生意気言いよって。単純な力量じゃ俺には勝てへんで」
「それは、まぁ。そうですね」
煙の向こうから薄く人影が見えてくる。ゆらゆらと揺れる影を不気味に感じる。
嫌な予感が駆り立ててきて仕方がない。
「確かに、俺じゃあトントンさんには敵いません。」
ゆったりとした口調で穏やかに認める。かすり傷や血の浮かぶ顔で、小さく笑みを含んだ言葉に、トクトクと心臓が早く脈打つ。
そして、
「でも、トントンさん。＿＿俺が今まで、俺のすべてを晒してきたと思います？」
僅かに細められる紫紺の瞳。
怠惰はゆっくりと私とトントンの周囲を歩き始めた。
「七つの悪魔の伝承は聞いたことないですか？ 怠惰の悪魔_____何もかもどうでもいい。とりあえず全部消えろ。全てを無慈悲に凍らし、」
ピタリと足を止める。
図書館で読んだ本の内容をそのまま唱える怠惰を目で追って、その先の文言が紡がれる前に、私は思い出した。思い出してしまった。
『トントン！！』
思わず叫んだ。しかし、遅かった。
「＿＿時を操る悪魔。」
カチン、と時計の針が何かの圧力で進まなくなる、そんな音が響き渡った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 995人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
miyaana(プロフ) - 初めまして、今日この作品を発見して一気読みしてしまいました！面白すぎます...。続編も楽しみに待ってます！頑張ってください (12月11日 20時) (
レス) @page40 id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
ランス(プロフ) - 砂糖里さん» ワクワクしてくれるなんて嬉しすぎます...！！これからも少しずつ更新していくので、どうぞよろしくお願いします...！ (9月4日 23時) (レス) id: 2ab0d8c443 (このIDを非表示/違反報告)
ランス(プロフ) - 裂けないパ◯コさん» あんばばばっ....嬉しいお言葉....頑張ります頑張ります...これからもこの作品をよろしくお願いします！！！ (9月4日 23時) (レス) id: 2ab0d8c443 (このIDを非表示/違反報告)
ランス(プロフ) - 碧さん» 返信遅くなり申し訳ないです...！！待ってくれている人がいてくれるだけで嬉しいッ、、これからも頑張ります...！ (9月4日 23時) (レス) id: 2ab0d8c443 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖里(プロフ) - 更新お待ちしておりました…！とってもワクワクする展開で続きが気になってしまいます！作者様のペースで頑張って下さい(*´꒳`*) (8月22日 7時) (レス) id: bc73dba8c9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ランス | 作成日時：2022年2月10日 20時
