Episode 3-22 ページ22
普段豚面でくぐもった声が妙にはっきりとしていて、そんな異変に顔をあげる。
被り物は半分喪失していて、晒された顔は血を流していた。
『ッ、トントン……！ 怪我……！』
「前線におったからな。直撃しても立ってられるのはロボロ様のお陰か？」
「うっさいわ。様付けやめい。」
顔を顰めるロボロに、ハハッと軽い笑みを零すトントン。
「まぁともあれ、俺の肉壁でご主人たちが無傷なら功績やな。」
『でもトントン怪我が……！ すごい血……！ ごめ、』
「………あんなぁ、ご主人。」
項に手を置きながら、トントンは呆れたようにため息をつく。
その表情は、呆れ半分、怒り半分。
声を荒げることはないが、眉間に皺がよっていた。
「ロボロと崖から落ちってったとき、守れんくて後悔した言うたやろ。俺、今でもけっっっこ〜〜〜〜〜根に持っとるんやで？」
『まだ気にしてたの…！？ そんなことないって、トントンは私の力になってくれてる！』
「はいそれ。」
ビシッと目前に指を差され、思わず肩を揺らす。
「俺もおんなじ。ご主人は、Aは俺の力になっとる。」
『力に……？ そんな……。』
「なってない思っとる？ まぁそこもおんなじやな。俺自身、ご主人の力になっとるとは思えんけど、そんなこと言うたらご主人怒るやろ。そんなことないって。実際心の底から思っとるんやろうけど。」
『うん、思ってる。』
「んでその逆も然りってこと。ご主人が、足手まといでごめんとか力になれてないなんて言うたら、俺も、怒る。」
怒る、そう口にしたトントンの声音は低かった。
私を思い、私の自虐に本気で怒ってくれているのだ。
なんて、優しい憤怒。
赤く燃える彼の瞳から目が離せない。
「諦めてたんや。俺は。何もかも。でも、ご主人が、俺を信じてくれるから。ちょっとだけ頑張ってみよ〜って思った。そんな小さな思いが、今ではこんな大きくなっとる。ご主人がここまで奮い立たせたんやで。」
『私が……？』
「せや。」
トントンは足を一歩踏み出す。
そして、顔だけこちらに向け、いたずらっ子のように口角を上げた。
「Aが俺を信じてくれてる限り、俺はまだまだ動けるで。あのいけすかん怠惰のあほをギャフンと言わせたろうやないか。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 995人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
miyaana(プロフ) - 初めまして、今日この作品を発見して一気読みしてしまいました！面白すぎます...。続編も楽しみに待ってます！頑張ってください (12月11日 20時) (
レス) @page40 id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
ランス(プロフ) - 砂糖里さん» ワクワクしてくれるなんて嬉しすぎます...！！これからも少しずつ更新していくので、どうぞよろしくお願いします...！ (9月4日 23時) (レス) id: 2ab0d8c443 (このIDを非表示/違反報告)
ランス(プロフ) - 裂けないパ◯コさん» あんばばばっ....嬉しいお言葉....頑張ります頑張ります...これからもこの作品をよろしくお願いします！！！ (9月4日 23時) (レス) id: 2ab0d8c443 (このIDを非表示/違反報告)
ランス(プロフ) - 碧さん» 返信遅くなり申し訳ないです...！！待ってくれている人がいてくれるだけで嬉しいッ、、これからも頑張ります...！ (9月4日 23時) (レス) id: 2ab0d8c443 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖里(プロフ) - 更新お待ちしておりました…！とってもワクワクする展開で続きが気になってしまいます！作者様のペースで頑張って下さい(*´꒳`*) (8月22日 7時) (レス) id: bc73dba8c9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ランス | 作成日時：2022年2月10日 20時
