59 ページ19
『…邪魔しないでくれる？』
「良い着物なんだろ、汚れんぞ」
『……………』
どうやら紅丸は着物が汚れる
心配をしてくれたようだ
キョトンと大きなアーモンドアイを
瞬きしていればその場にストンと立たされた
「此処じゃ見かけねェ上物だろ。上も袴(下)も」
確かに父からの贈り物なので
安物では無いと思うがまさか紅丸が
着物の心配をしてくれるとは思っても
みなかったので、クスクスと肩を震わせて
笑ってしまった
『あ、ごめんなさい。貴方が着物に詳しいなんて思って無くて……それに、多分もう着ないから平気よ』
「………」
焼け焦げた会社跡は
お世辞にも綺麗とは言えぬ程荒れていた
煤はもちろん土埃だって付く
そんな事はお構いなしに幼女は
笑ってまた地面に膝をついて何かを調べている
喋り方や仕草、姿勢や容姿から彼女は
それ相応の教育を受けていることが分かる
ガサツで杜撰な人間が多い浅草では
そう言った人間は良くも悪くも目立つ
良いところのお嬢様なのだろうが
身なりを気にせず自分の研究に没頭する
幼女はやはり記憶の中の彼女と重なった
「お前ェ…姉貴は？」
『……？』
「兄妹は？」
『居ないわ……紺炉からも聞かれたけれど、私は一人っ子なの』
「…………じゃあ、何者だ？」
『……同じ質問にはあまり答えたくないのだけれど』
「聞けば灰島の人間でもねェ、第８の人間でもねェ……なんの為にこんな所調べてんだ」
『…………』
幼女は立ち上がって自分よりも高い
紅丸の顔を覗いた
その顔は幼女らしからぬ真剣な眼差しだった
『知りたいの。私にとって"知る事"が生きる事なの……私の知らない事がこの世界には沢山ある。それを知りたいの……それだけよ』
「………此処で得られた情報は第８に回んのか？」
『…あの爆発頭には共有するつもりよ。周り巡って第８にも私が調べた事が共有されるでしょうね』
「…………うち(第７)は」
『……へ？』
「うち(第７)にも頼めば回してくれんのか」
『………私が調べてるのは伝導者の一味よ？……浅草を警邏する貴方達は必要かしら？』
「こっちから手を出すつもりはねェ。向こうが喧嘩吹っかけて来んなら相手してやるだけだ」
『………なら、尚更必要無いと思うけれど…』
この男は何考えてんだと幼女は頭を悩ませた
いや、喧嘩喧嘩と暴れる事しか頭にない
脳筋の考えている事なんて
考えるだけ無駄だと思い作業へ戻った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆー - アアアアア紺さんと紅ちゃんも来たヨォ最高 (2020年12月3日 22時) (
レス) id: a1e8810d71 (このIDを非表示/違反報告)
辰砂(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます(^^)楽しんで頂けて幸いです！このご時世ですからね…今の所体調不良は無いですが私のペースで更新しますので何卒宜しくお願いします (2020年9月9日 16時) (レス) id: 96fa6c78c6 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - とても雰囲気が好きです！前作に引き続き、楽しませてもらってます。こんな世の中なので健康に気をつかいつつ、更新頑張ってください！ (2020年9月8日 23時) (レス) id: 23cfa4baa4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：辰砂 | 作成日時：2020年8月31日 13時
