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『だから、顔を貸しなさいって言ってるのよ』

「それが人に物を頼む態度か?」

『私がどれだけ貴方を探したと思っているのかしら?』






どうして自分はこんな幼女に腕を組まれて
上から目線で物を言われなきゃいけないんだと
不機嫌そうな声色で幼女へ答える

何故か幼女の隣でこめかみを摘んでいる紺炉へ
視線を向けるが、さっき逸らしたきり
一切紅丸を見ようとしない






「しらねェよ。てめェが勝手に来たんだろ」

『……"タダ"とは言わないわ』

「…………」





幼女はキャリーケースを開けて中から
長方形型の桐箱を取り出した

よっこいしょ、と彼女にとって重たそうに
持ち上げて紅丸へ差し出す

なんだと思い蓋を開けてみれば
桐屑に埋もれた"神鹿"と書かれた日本酒だった




「お前ェ…コレ……」

『どうかしら?もう手に入らない最高級の日本酒よ』

「こんなモンどっから持って来たんだ!?」





私の希望を聞いてくれるなら差し上げるわと
小悪魔的な笑みを浮かべて2人を見た

"神鹿"三年前まで存在していた酒蔵で
製造された最高級の日本酒

今はもう他の酒蔵へ吸収されてしまい
"神鹿"は作っていない






『プレミア品よ。本当なら私のご褒美晩酌用に取って置いた物なんだけど…』

「ガキが晩酌だァ?」





紅丸は幼女の言葉に片眉を釣り上げて
はぁ?と言いたげな顔をしている横で
もう手に入らないプレミア品の日本酒を目の前に
開いた口が塞がらない紺炉

この日本酒、実は"先代"が
よく好んで呑んでいた日本酒だった


紺炉はやけにキャリーケースが重たいと
思っていたら、まさか一升瓶が入っているなんて
思わなかったと頭の片隅でそんな事を考えていた





『……貴方の部下には話をしたけど、私こう見えて成人しているの』

「……寝言は寝て言うモンだってしらねェのか?」

『そんなことを言うならソレ…返してくれる?』

「……………」





ほら、返しなさい…と言えば紅丸は
桐箱から一升瓶を出して桐箱だけを
幼女へ突き返した

ムッとた表情で紅丸を見れば紺炉が何やら
紅丸に耳打ちをしている

あァ!?何で俺が、と嫌そうに紺炉を見たが
日本酒を見つめながら頭をくしくしと掻き
脱ぎかけていた靴を履き直して
日本酒を紺炉へ押し付ける

詰所の暖簾を手で退けて幼女に早く来いと言った


なんだ?と思い紺炉へ顔を向ければ
ヘラリと笑って
若が一緒に行ってやるって良かったなと言った






『……まるで大きな子供ね…』





キャリーケースを引っ張って
彼女は紅丸の後を追った

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ゆー - アアアアア紺さんと紅ちゃんも来たヨォ最高 (2020年12月3日 22時) (レス) id: a1e8810d71 (このIDを非表示/違反報告)
辰砂(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます(^^)楽しんで頂けて幸いです!このご時世ですからね…今の所体調不良は無いですが私のペースで更新しますので何卒宜しくお願いします (2020年9月9日 16時) (レス) id: 96fa6c78c6 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - とても雰囲気が好きです!前作に引き続き、楽しませてもらってます。こんな世の中なので健康に気をつかいつつ、更新頑張ってください! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 23cfa4baa4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:辰砂 | 作成日時:2020年8月31日 13時

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