沈黙のアレキサンドライト (ページ32)

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以前千空から聞いた話では文明が発達していて
あらゆる便利な物が世界中に溢れかえっていたと言う

死んだ祖父がよく言っていた。

"使わないものは次第に要らなくなり消えてゆく"

それは生き物も同じだ。

光の届かない洞窟で一生過ごす魚と
日の当たる所で一生を過ごす魚とでは
姿形は恐ろしく違う。

全く日の当たらない洞窟内の魚の目は
見えなくなっていた
光がなければ視界は生まれない。
一閃先は闇ばかり。だから魚は視力を捨て
触覚や嗅覚器官が逆に発達を遂げた。
それらとは反対に視力が
究極に良くなった魚もいると言う
ほんの少量の光でもはっきりとした視界を
手に入れたのだ。
他にも自ら発光する魚もいるそうだ。

これらを祖父は"進化"と呼んでいた。
今ある現状の物が優れれば"進化"と
逆に劣れば"退化"と呼んだ。

逆に目が無くなるのもある種の"進化"だろうと
Aは思っていた。

人間もそうだ。

便利な物が溢れればそれだけ"使わない部分"
が出て来る。

それを不要と認識して新たに退化(進化)する。

磁石を作るときだってそうだ。
ハゲ山を登るのにも千空はコハクに
連れて行かれていたし(遅い為)ゲンだって
辛そうに登っていた。

かく言う体力の無いアレキも
息切れはしていたが彼らほどではない。

『(…便利すぎるのも良くないのかもしれない)』

身体に必要なモノだからと言って
過剰に取りすぎれば"毒"となるケースは多々ある。

向こうの国の王の言い分も理解出来てしまう
自分に嫌気が差した。

『(便利な物が増えればそれを巡って争いが起こり、それを獲得した者が何も得て居ない者へデカい顔をする…そしてそれがエスカレートすればまた争いが起こる。………悪循環だな…)』