喧嘩は良くない ページ36
隣にいたはずのペンギンが
本と入れ替わって居なくなって、
私はその場に落ちた本を拾う。
それは真新しい医学書のようで…
消えたペンギンの姿を探そうと、
本から顔を上げたその時、
私の体がふわりと浮かび上がり
視界には地面と派手な柄のズボンが見えた。
ああ…、デジャブだ。
私は再び、ユースタス・キッドの小脇に抱えられ
クラッチバッグになる。
私はそのまま視線を変え、右上を見上げた。
ｷｯﾄﾞ「A、ずいぶん面白ぇ格好してるじゃねぇか」
そう言って笑っているが
ユースタス・キッドのこめかみには
青筋がハッキリと浮かんでいた。
子供が見たら泣くよ？その顔。
なんて言える訳もなく
私はただごめんなさい、と素直に謝る。
すると、謝る必要はねぇ、と
背後から声がした。
ﾛｰ「人の話を聞かねェ、そいつが悪ぃ」
その声に、ユースタス・キッドが振り向いて
私の視線も自然とそちらを向く。
そこにはローとペンギンが居た。
ﾛｰ「ユースタス屋、うちは感謝こそされても、いきなり襲われる謂れはねェぞ」
そう言いながら
ローは不機嫌そうに眉を寄せた。
するとそれ以上に不機嫌そうな声を
ユースタス・キッドがあげた。
ｷｯﾄﾞ「うちの船員引き込もうとしやがって何が感謝だ。ふざけたこと言ってんじゃねェぞ、トラファルガー」
両者これでもかと言うほど
バチバチに火花を散らせているけど…
私は口を開いた。
『あの…私、漂流してたところをローに助けてもらったの。服が濡れてたから、これは借りてるだけで…』
勧誘もされていない。
そう続けようとしたけど、
ユースタス・キッドの声によって遮られた。
ｷｯﾄﾞ「てめェはもう少し危機感ってもんを持て。相手は海賊だぞ」
ユースタス・キッドの言葉に
そんなこと言ったって…と、
私はローに視線を向けた。
すると、目が合ったローは
フン、と顔を背けながら言った。
ﾛｰ「今ここで派手にやり合う気はない」
ほら、と私がユースタス・キッドを見上げても
彼はローの出方を伺うように
じっ、とその視線をローから外さない。
そこに、ニヤリとローが笑って
また口を開いた。
ﾛｰ「A屋。今回は引くが、次に会った時は全力でお前を奪いに行く」
『えっ！？』
思わぬ言葉に驚くと、ローとペンギンを
すっかり見慣れたサークルが囲んだ。
ペンギンがその中でヒラヒラと手を振ったかと思うと
2人の姿は消え、
そこには小さな丸太が落ちた。
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作者名：優梨 | 作成日時：2023年2月8日 9時
