ポーカーは数学です！ ページ29
ポーカーは運だけのゲームじゃない。
数学的確率のゲームでもある。
私は紙とペンを貰って
それぞれの役が出る確率を計算してメモする。
ｷｯﾄﾞ「…何してんだ？」
『あー、それぞれの役が出る確率を計算してます。
それぞれの役が揃う時の確率を求めて、乗るか降りるかの指標にしようと思って』
私の言葉にクルーたちは難しそうな顔をする。
計算を終えた私は
紙からキラーさんへと視線を移した。
『ポーカーは、相手の表情なんて見れなくても成立するゲームですからね』
私の言葉に、キラーさんの首がかすかに動いた。
相変わらず表情は分からないけど
多分、笑っているんだと思う。
ｷﾗｰ「これは、面白い勝負になりそうだな」
そう言ったキラーさんの声が
少し楽しそうに聞こえたから。
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『コレで、皆さんのお金は多少は戻りましたかね？』
私はそう言うと、勝ち取ったお金を
ずいっとみんなの方へ出した。
あれから最初の10分ほどの間、
私は負けてもいいからとにかくコールしながら
キラーさんのプレースタイルを観察した。
そして表情は読めなくとも、
手札の揃い具合によって
微妙に変わる手つきや力の入り具合も読む。
だいたいを掴めだしてからの20分間は
私もブラフを混じえながら
フォールドしたり、レイズしたり…
ｷﾗｰ「Aは駆け引きが上手いな」
キラーさんはそう言うと、
肩を竦めた。
私はそんなキラーさんに笑ってみせる。
『顔が見えなくても、キラーさんをよ〜く見てると、仕草で分かることもありますから』
私がそう言うと、私の目の前に影が落ちた。
なんで急に影が…
そう思った瞬間、私の頭は
いつかみたいにガシッと掴まれた。
そして容赦のない力で
ガシガシ、と乱暴に撫で回される。
相変わらず撫でるパワーじゃねえや、
と思いながら右を見上げると
ユースタス・キッドが左腕で
私の頭を撫でていた。
ｷｯﾄﾞ「強ェじゃねェか、A!!」
そう言って笑うユースタス・キッドの笑顔は
なんだか子供みたいで少し可愛い。
普段はあんなにヤンキーみたいなのに…
ヤンキー超えて極道みたいなのに…
『……どうも』
乱暴すぎる撫で方に抗議する気も失せて、
今はもう少しだけ、
この左腕に撫でられていたいと思った。
こんなふうに褒められることは
大人になるとめっきりなくなるから…
だから惜しく思ったんだ。
…たぶん。
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作者名：優梨 | 作成日時：2023年2月8日 9時
