優しさの塊みたいな人 ページ25
一悶着を終えて私が船に戻ると、
船は普段と違ってガランとしている。
私は自分の部屋に本を置くと、
男部屋のシーツと
女部屋のシーツをかき集めた。
そして急いでそれらを洗っていく。
1枚1枚が大きいから
普段の洗濯の比ではない重労働。
だけど、嫌な気持ちは一切ない。
もともと趣味もそこそこに
毎日仕事と家事の繰り返しだったから、
こうして何かやることがある方が楽だ。
難しいことを考えなくても済むし。
洗い始めて何分たったか、
洗い終わって綺麗にすすいだそれを
今度は必死に搾っていく。
ああ、洗濯機のすすぎ機能が恋しい。
なんて思っていると
後ろからニュっと腕が伸びてきて
次のシーツを掴んだ。
『ぉわっ！？』
急に伸びてきた腕に驚いて
思わずその場でコテンと尻もちをつく。
すると、
ｷﾗｰ「すまない、驚かせたか？」
そう言ってキラーさんが
顔…というか仮面をのぞかせた。
いえ、と返して私は起き上がる。
すると何事も無かったかのように
キラーさんがシーツの水を絞る。
『あ、そんな、悪いです』
ｷﾗｰ「Aの細腕でこの量は大変だろう。手伝わせてくれ」
キラーさんの手からシーツを奪おうとしたら
それを意図も簡単に避けられてしまった。
でも、と言っても返してはくれなそうで
私は諦めて、ありがとうございますと伝える。
キラーさんは作業の手を止めることなく
また口を開いた。
ｷﾗｰ「礼を言うのは俺の方だ。
いつも本当に助かっている。ありがとう」
そう話したキラーさんの声色は柔らかくて、
海賊なのを忘れるくらいキラーさんは優しい。
頼まれてもいないのにスっと手伝ってくれるなんて
スマートすぎやしないか？
初めて会った日からずっと、
キラーさんはこの世界で出会った誰よりも優しい。
いつもいつも優しくしてもらっているから、
なにかお返しは出来ないかな…？
そう思った私は、シーツの水を絞りながら
キラーさんに声をかけた。
『キラーさん、今日の夕食は食べに行くんですか？それとも船で？』
私の声に、キラーさんも手を止めずに返してくれる。
ｷﾗｰ「船番だからな。俺は船で済ませるが…」
『それなら、私が作りますね。私も夕食は船でとるつもりだったので』
普段は30人分作るから
なかなか品数を増やしたり、手間ひまをかけれないけど
今日は好きなように作れそうだ。
何を作ろうかなー、と心が踊った。
_
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：優梨 | 作成日時：2023年2月8日 9時
