クラッチバッグ？ ページ19
ｷｯﾄﾞ「”
突如聞こえてきたユースタス・キッドの声とともに
数本のサーベルがローに向かって飛んでいく。
チッと舌打ちをしながら
ローたちがいた所には複数の瓦礫がボトッと落ちた。
また、シャンブルズだ。
そう思った瞬間、体がふわりと浮いて
地面から足が離れた。
なにごと？と首を回せば
私を小脇に抱えて見下ろしてくる
ユースタス・キッドがいた。
ｷｯﾄﾞ「ったく、一瞬目を離した隙に攫われてんじゃねえよ」
『いや…あれは防ぎようがないと言いますか、』
私が言い訳をしようとしても
うるせぇ、と一蹴されてしまった。
そして、ユースタス・キッドは少し離れた場所で
こちらを見やるローを睨みつけた。
ｷｯﾄﾞ「残念だな、トラファルガー。こいつはうちのクルーだ。勧誘なら他を当たれ」
ﾛｰ「何度言わせるつもりだ。俺に命令するな」
言葉を交わして睨み合う両者。
そんな中、ユースタス・キッドの小脇に
軽々と抱えられた私。
…なんと滑稽だろうか。
けど、グズグズしてる暇なんて無いはずだ。
パシフィスタ一体を倒したと言っても
この島にはまだ戦桃丸も黄猿もいる。
早く逃げた方がいいに決まってる。
『あのっ、ロー！私ハートの海賊団には入れない。もうキラーさんに服も日用品も買って貰っちゃったから』
私は顔を持ち上げてローに向かってそう口を開いた。
だからごめんね、と。
そして私を抱えるユースタス・キッドを見上げる。
『ユースタス・キッド、海軍の追手が来ちゃうからもう行こう！私も自分で走れるから…』
ｷｯﾄﾞ「うるせぇ、てめェの足だとまた攫われかねねェからな。このまま連れてく方が早ェ」
ユースタス・キッドはそう言って
私を抱えたまま走り出す。
何だこの抱え方は。
私は貴方のクラッチバッグですか？
ユースタス・キッドの足が前に出る度
ユサユサと私の体が揺れる。
チラリと振り返ってみれば
ローはまだこちらを見ていた。
バチン、と目が合った瞬間、
ローは一瞬目を見開いてフイっと顔を背けた。
そして、ローはペンギンやシャチを連れて、
私たちとは別の方向に向かって立ち去っていく。
2年後にはまた再会して共闘するんだよなあ
そう思いながら私がまた視線を前に向けると
すぐ隣にキラーさんが並んで走っていた。
ｷﾗｰ「A、大丈夫か？」
『はい、お陰様で』
そう言うとキラーさんは
これからは気をつけろ、と告げて
先に船へと向かった。
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作者名：優梨 | 作成日時：2023年2月8日 9時
