1回涙を流したなら、21 ページ26
(Aside)
久しぶりに帰って来た家。何も変わらなくて、わたしが辛い思いを散々してきたあの家だ、と思うと少し足がすくんだ。右手には、初めて4人から貰った物であるヘアゴム。ボロボロになって、赤と紫の花の部分は汚れ、黄の大きめなリボンはほつれ、緑のビーズはいくつか無くなってしまっている。
でも、喜多原達に集団で暴力を振られた時。佐倉に監 禁され痛めつけられる中でも。婚約会見で死を覚悟したあの時も。いつだって離さずに持っていた、大事な宝物。
「………おかえり、」
「っ……！、ただい、ま。お母さん。」
母と話したのは何年振りだろうか。母の目は私を捉えながらも、どこか遠くを見ていたあの目ではなく、しっかりと、瞳の奥まで私を映していた。
今となって考えれば、母が育児ノイローゼというものになったのはあの一件からだろう。何もかもが崩れ去ったのは、全て、あの事件が始まりだったのだ。
4人が座れるダイニングテーブルに、母、父と向かい合って座る。
父がその重々しい口を開いたのは、数秒後だった。
「縁を切りたい、というのは本当か？どういうつもりだ？」
「私は、疲れたんです。自分を偽ることに。へらへらと平気で嘘を吐き、したくもない結婚を強要させられ、その婚約者に殺されかけ、そして今、大事な人が死の間際を彷徨っている。」
私は、生まれた時から愛を貰うことがなかった。それは、完璧な姉に全てを奪われてしまっていたから。
今思い出したことだが、幼い頃、姉はうらたさんですらも私から遠ざけ、独り占めしていた。
絵本を読んでもらおうと思い、うらたさんに声をかけた。うらたさんは、膝に座っていいよ、と言った。だが、座ったのは姉だった。
そんな些細な事、と思うかもしれない。でも、まだたった4歳の子供からしたらかなり辛い事であっただろう。
「……縁、を、切るのは……受け容れよう。だが、これまであったことを全て話す、というのはよしてくれないか？たまださえ翼くんの事で私の事務所は大損害を受けている。これ以上は、」
「嫌です。もう、私は誰かの言いなりに、都合よく動く操り人形にはなりたくないです。それに、全てを告白した上で私は、目を覚ましたうらたさんに会いにいきたい。」
父が顔を顰め、母の瞳にはだんだんと涙が溜まっていった。
「私は、愛されなかった。いつも、おまけだった。だから、りんを捨ててAになった。でも、そんな足掻きも無駄だった。」
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あおい(プロフ) - 久しぶりに見つけて読んでみたら、やっぱりめっちゃ面白かったです……大好きです！！ (2020年12月29日 23時) (
レス) id: e7f1d7c7f6 (このIDを非表示/違反報告)
きゆ - shinoさんはじめまして！この小説すっっっごい好きです！なんかうらたんがアレなところとか！（語彙力逃走中すいません）頑張って下さい！応援してます！ (2019年8月29日 20時) (レス) id: a065501dc8 (このIDを非表示/違反報告)
エル - 初コメ失礼しますっ！この小説めっっっさ好きです！！頑張ってくださいね！待ってます！ (2019年8月3日 22時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - (´∀｀)b (2019年8月2日 7時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - 人気な人ほど、アンチというか。。。よく思わない人がいたりするんです。今少なくとも作品をお気に入りにいれてる1600人近くは、あなた様の味方です。もちろん私も！更新待ってますね！ (2019年8月1日 12時) (レス) id: 58ea8aaecc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：shino | 作成日時：2018年12月22日 16時
