回想(友の死)5 ページ44
降谷はAの寝ているベッドサイドの椅子に腰掛けるとAの手を握った。
血を大量に失った身体は想像以上に冷たく、無機質な音が連続的に響いている心電図のモニタが無ければ、生きている事を疑うレベルだ。
(どうしてこうなった…。)
降谷はAの手を自分の頬に持っていきジッと顔を見つめた。
酸素マスクで顔半分覆われて、いつもの笑顔は見られない。いつも降谷を見上げる大きな漆黒の瞳は今は固く閉じられている。
(どうしてなんかじゃない。俺のせいだ。)
親友の復讐のため、組織の一員を確保する名目で奴を捕らえようとした。奴が、ライがその場に現れるのに武装している事は当たり前だった。
(仲間が撃たれる可能性なんてあるに決まってた…)
もちろんそれは公安の彼らも承知の上だっただろう。誰が負傷したとしてもおかしくは無かった。だが降谷はまさかAが撃たれるとは思っていなかったのだ。
なんの根拠もなくただ漠然と。
A以外が撃たれるのは構わないと心の何処かで思っていたのかもしれない。酷い奴だと自分でも思う。
「すまない、A…。」
呼吸でゆっくりと上下するAの胸を見ながら降谷は息を吐いた。
「死神……か。」
いつからかそう影で噂されるようになった。始めこそ畜生と思っていたが大切な人を次々と失う内に自分でもそうでないかと思うようになってきた。
もしAがこのまま逝ってしまったらどうする?
「組織の幹部何人か巻き込んで散ってやろうか…」
ボソッと呟いた降谷の手にピクリとAの指が動いた感触が伝わった。ハッとAの方を見るが、相変わらず彼女は深い眠りの中である。
「ごめん、『勝手に死なすな』って?」
そうだ、彼女はまだ生きている。生きているのだ。俺はまだ全てを失ったわけじゃない。
彼女を失う訳にはいかない。絶対に。
降谷は儚く笑うとAの頭をゆっくりと撫でた。
「ねぇ早く目を開けて、A。」
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ライス(プロフ) - とても深いグリーンさん» コメントありがとうございます!ホワイトもお読みいただいて!ありがとうございます。二足の草鞋にした途端に更新がさらに遅くなってしまって申し訳ないですが、更新頑張ります! (2018年3月26日 20時) (レス) id: 558584540e (このIDを非表示/違反報告)
ライス(プロフ) - 羽田莉來さん» コメントありがとうございます!そうですよねー!私も書いてみたいです!今後書けたらいいなぁと思います! (2018年3月26日 20時) (レス) id: 558584540e (このIDを非表示/違反報告)
とても深いグリーン(プロフ) - 最近更新してくださってうれしいです(^^)ホワイトも楽しく読ませて頂いてます。両立は大変かもしれませんが頑張って下さいp(^-^)q応援してます♪ (2018年3月19日 20時) (レス) id: 629a69f0d0 (このIDを非表示/違反報告)
羽田莉來 - 夢主が公安時代の、付き合いたての時のお話がいつか見てみたいです!どっちが、どんな感じで告白したのかとか気になります。余裕がある時でいいので、検討して頂けると嬉しいです。スルーして頂いてもいいです笑 応援してます! (2018年3月15日 23時) (レス) id: 0caa1fa3ee (このIDを非表示/違反報告)
ライス(プロフ) - 友の死回想編は一応完結になります。この話の続きとしてシリーズ1の女子会の回想に繋がります。なかなか更新が遅くて申し訳ないですが、映画までに裏切りのステージやりたいですね! (2018年3月5日 21時) (レス) id: 558584540e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ライス | 作成日時:2017年11月29日 21時