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式の翌日。エリザベスは、アメリカの家族に別れを告げて船でイギリスへと渡った。
広すぎるほどの屋敷。エリザベスが到着すると、仕えている使用人たちが入口に並び、「侯爵夫人」を出迎えた。
アメリカの屋敷では味わわなかった感覚。戸惑いを感じながら、エリザベスは屋敷の中へと入っていった。
戸惑いだらけの感覚。それは、エリザベスが確かに英国の侯爵夫人になったという、証のようにも見えた。
(早く慣れなくちゃね……)
アーサーといえば、仕事だからと屋敷を離れ、結局一言も言葉を交わしていない。
慣れない地での生活。未だ先の見えない、夫婦関係。まだまだ問題は山積みのまま。
それでもひとつずつ乗り越えていくしか、自分に道はないのだろう。
(自分からどうにかしなくちゃ、始まらないんだわ。)
エリザベスは小さくため息をついて、座った椅子から窓の外を見た。
傾きかけた赤い陽が、うすらぼんやりとエリザベスを照らし出していた。
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作者名:幻想曲 | 作者ホームページ:http://uranai.amanoboru
作成日時:2015年12月28日 1時